微睡みの中で声がした。白い灯りが瞼を突き刺す。
ノイズ混じりの声だった。例の放送が響き渡る。
何の役にも立たなかった。ここには俺とお前だけなのに。
午前7時のことだった。壁から剥いだ時計が伝えた。
108日目の朝だった。スマホの日付はそれも置き去りに。
今日も生きてはいなかった。ただ居るだけなら無いのと同じだ。
階段を登る。
顔を洗う。
パンを齧る。
スマホも齧る。
蛍光灯の照らす階段で、柵無き迷路に迷い込んだ。
扉が隔てた異界の中で、無為の安寧を貪った。
そして、また1日が終わる。
微睡みの中で声がした。素直に寝かせてはくれないらしい。
ノイズ混じりの声だった。呼ばれた所で行く宛も無いのに。
何の役にも立たなかった。それは俺だって同じだった。
13Fを後にした。強いて言うなら焦りだろうか。
109日目の朝だった。これ以上何を望むのだろう。
今日も死んではいなかった。物種と言えど蒔く地は無いのに。
階段を登る。
パンを齧る。
足を摩る。
階段を登る。
実体の無い逃避を重ね、意味なくフロアを積み重ねた。
ただ安全な箱を彷徨い、数百回目の分岐に至った。

