ブルーチーズ・ルーム
評価: +19+x
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危険度: 2
空間信頼性: 不明
実体信頼性: 混雑
情報提供待ち

例外階層 "ブルーチーズ・ルーム" とは、バックルームにおけるさまざまな階層内に存在する特徴的な部屋のことである。

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完全にブルーチーズ・ルームに侵食された状態の部屋

概要

この空間はほかの階層の一部分を上書きするような状態で唐突に現れる、青白い磁器製の装飾タイル(デルフト・タイル)によって全面を覆いつくされた異様な部屋である。大小のタイルの絵柄で几帳面に塗りつぶされたこの部屋は階層内のほかの空間と隔絶されているかのように不連続に涼しく、周りがどのような空間であろうと12℃ほどの低温・多湿を保ち続けている。その青を基調とした異様な光景と、この部屋全体に漂うカルキ臭のようなツンとした香りが青カビを連想させることから、"ブルーチーズ・ルーム" という通称で呼ばれるようになった。

完全にタイルで埋めつくされたこのような部屋には、壁面に背を合わせるように真っ黒なひじ掛け付きの椅子が数台置かれていることが多い。その他のものは何も置かれていないことがほとんどであるが、稀に大きな漆黒のテーブルや、その上に積み重なった同じく青白い磁器製の食器と、それから綺麗に盛り付けられたミートローフ、薄切りのチーズやサラミ、藁の籠に積まれたバゲットなどが見つかることがあり、総じて生存には比較的困らない環境であるといえるだろう。青白いタイルに覆われた元の壁や床がどのようになっているのかは、全く定かではない。


経緯

2022年3月、"ブルーチーズ・ルーム" に関する最初の目撃情報が報告された。

ある者が Level 19 N ──白い蛍光灯で明るく照らされた、肌寒い商業施設の通路がどこまでも続くような階層に迷い込み、そのまま数日間ほど無限長に入り組んだ通路内の探索を続けていたところ、ふとある通路の先の白いリノリウム壁が不自然に途切れており、代わりに青白い陶器のタイルがその通路の先までびっしりと埋め込まれている様を発見した。

その先に立ち入るやいなや、爽やかな香水のような気配に混じってわずかに空調の匂いが充満して乾燥している Level 19 N の空気感が途端に止み、代わりにカビがそこら中に生えているのかと錯覚するような鼻をつく香気と強い湿気がせり上がってきたことをはっきりと覚えているという。わずかに二・三回の分岐を繰り返しながら段々と薄暗くなっていき、その先はすべて袋小路になっていた。それらの袋小路には例外なく、その行き止まりの中央に黒ずんだ椅子がたった一脚、こちらを向いて鎮座していた。

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詳細不明。Level 500 N で撮影された "ブルーチーズ・ルーム" ではないかと推測されている。

この報告は単に イレギュラーなもの として処理されたが、その一か月後の4月には Level 500 N で別の目撃情報がなされた──集合団地のある一室、その内部が完全にブルーチーズ・ルーム様に変化していたというものだ。ある棟の505号室の扉を開けば、その向こう側には青白く水っぽいタイルで満たされて曲がりくねった廊下が続いており、進んでいったその先にあった扉は別の棟の208号室の入口であった。

さらに別の通常階層から、同時期に立て続けて3件の関連報告がなされたために、いよいよブルーチーズ・ルームは複数階層にて横断的に発生する事象であるとの確証が高まった。2025年8月現在では、ブルーチーズ・ルームに関する報告は累計160件寄せられている。


不可解な報告

ブルーチーズ・ルームにはまだ解明されていない部分が多く存在する。それは次のような報告に起因するものだった── Level 303 N のどこまでも広がる山がちな欧風の郊外に滞在していた際に、玄関が開けっ放しになったとある家屋の内部がすべてブルーチーズ・ルームと化しているところを見つけた。ある程度爽やかであった外の空気から一変して、屋内空間はやはり青カビのように鼻を突くこもった臭気で満たされていた。報告によると、当時バックルームに1年間ほど滞在しており、ブルーチーズ・ルームを見かけたのは既に7度目にわたるとのことだった。であるから、それはある程度は平静な現象であると認知していた。

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Level 303 N(外)と、その中で発見されたブルーチーズ・ルーム

しかし、その階層でふと外れ落ちた1のち、そこから様子がおかしかった。外れ落ちた先はすでに一面がブルーチーズ・ルームと化していたのだ。振り向いても振り向いても薄暗く、どこまでも湿っぽい青いタイルで埋めつくされていた。はじめに辿り着いた部屋から移動して、しばらくタイルと湿気で生暖かく塗り潰されて人のいない銭湯のようになっていた廊下を練り歩いていると、その先にはわずかにタイルの貼られていない区画があった。この空間においてここだけは蛍光灯で明るく照らされており、周囲には事務用品やオフィスデスクが積まれていたことからここが辛うじて Level 35 N だと判断できた。

そこからは、想像に難くない。この階層からどうにか外れ落ちてもブルーチーズ・ルームに上書きされていて、その先の階層もブルーチーズ・ルームと化しており、さらにその先も……と、バックルームにおいての "外れ落ちる" 行為が階層の移動手段として意味をなさずに、ついにブルーチーズ・ルームから抜け出すことができなくなってしまったとのことだ。同様にしてブルーチーズ・ルームに "閉じ込められた" 報告は、累計で7件のみ確認されている。


2つの異説

このようにしてブルーチーズ・ルームに閉じ込められる現象は、バックルーム全域で起こっている大規模な空間構造の変化を示しているのではないかという、すでに棄却された説がある。つまり、すべての階層は、ひいては 現実世界 もやがてあの様な不可逆的な空間の変遷によって置き換わられていく現象に直面しているという終末論的な考え方である。しかし、その説ではまだ説明できない点が多い。何よりバックルームにいる全ての者がそのような局面に遭遇しているわけではないし、その上現在ブルーチーズ・ルームに閉じ込められてしまっている者は、皆一様にその前にブルーチーズ・ルームに既に5度以上遭遇したことがあると述べているのだ。この経験の一致は不可解である。

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"外れ落ちれば外れ落ちるほど、現実世界から離れて、ブルーチーズ・ルームに近づいていく" という概念の図的な説明

もう一つ、実は"外れ落ちる"という行為そのものが、ブルーチーズ・ルームへ近づくことに等しいのではないかという見解がある。人々は現実世界から外れ落ちて、バックルームに辿り着く。バックルームで外れ落ちれば外れ落ちるほどに、なんらかの距離的概念が現実世界から遠ざかっていく。バックルーム内におけるその距離が現実世界から極端に離れた場所において、ブルーチーズ・ルームが出現していくという仮説である。

この考えでは、"ブルーチーズ・ルームに閉じ込められる" という現象に、"外れ落ちる回数の閾値を超えてしまったから" という説明を与えることができる。階層間を自由に移動できる回数には、実は制限があったのかもしれないという懸念とも、言い換えられる。

しかし、外れ落ちなるものが何なのかすらよくわかっていない現状、これは単なる仮説でしかない。結局のところ、この現象が何なのかは判然としていないのである。


入口と出口

階層への入り方

体系的な階層への入り方は存在しない。ほとんどすべての階層で、突如その全容がブルーチーズ・ルームに置き換えられた部屋に遭遇することがある。

階層からの出方

ブルーチーズ・ルームとなる前の元の階層を特定し、その階層から脱出する方法を実践することで、別の階層に外れ落ちることが可能である。しかし、空間全体があの青いタイルで埋めつくされて元の階層が判別できない場合や、外れ落ちた先の階層までもがまたブルーチーズ・ルームに侵食されている場合すらある。

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