Level 92 N の比較的広い部屋
Level 92 N は、バックルームにおける 92 N 番目の階層である。
概要
Level 92 N は、低い天井と、寝具で構成された床によって特徴付けられる不安定な屋内空間である。室温はおおよそ20℃以上であり、空気は適正湿度よりやや乾燥している。蛍光灯や電球が時折ちらつき、室内の静けさに冷房のノイズが響いている。
天井高は一般的に1.5~2m前後で、多少身を屈めて移動する必要がある場所が多い。最も極端な場合では天井が寝具を押しつぶすほど低く、寝具一式を敷いた後に天井を施工したかのようである。
床は一面が寝具であり、その下部に通常の床面構造は発見されていない。ほとんどの寝具は新品のように清潔である。弾力性の高い場所を歩かざるを得ず、低い天井と併せて移動時に疲労が蓄積しやすい。
多くの部屋で十分な照明が設置されており、室内が明るく保たれている。壁面には照明を消灯することが可能な操作盤や、交流電源を出力するコンセントなどが存在する。
空間の不安定性
振り向いたり壁や扉に遮られることによって視界から外れた部屋が即座に変動し、遠くの部屋が奇妙に揺らめいて見えることもあるほど空間が不安定である。手の届く範囲で変動が起こることはまずないため、荷物や同行者からは可能な限り離れず視界に収めておくように注意する必要がある。この階層で眠ると、目覚めた時には自分自身の周囲数mを残して空間の全てが変動している。変動によって現れる空間には一定の特徴があるものの、全く同一の構造を持つ空間が繰り返し現れることは無く、その先で他の人間や生物と出会ったという報告も数例を除いて存在しない。この性質のため、空間の広さは実質的に無尽蔵であると思われる。
夢
この階層での睡眠は非常に長期間になりやすく、バックルームを探索するような内容の夢をよく見るとされている。夢の中で彷徨うのは Level 92 N 自体であることが比較的多いが、出口の項でも述べるように外部の階層を夢に見ることもある。実際にその階層で夢を見ているはずの放浪者と接触したとする証言や、夢の中から書き込んでいるものと自称する報告が相当数存在することから、睡眠を取ることがこの階層から脱出する手段であるかのように思える。しかし実際の証言を総合すると、夢によってバックルームを彷徨っている期間には超現実的な現象や意識の混濁が頻繁に発生し、やがてはこの階層で再び目を覚ますことになるようである。なお、夢の中の Level 92 N で再び眠ることで、同様に夢を見ることが可能である。
物品
Level 92 N に存在する一般的なスナック菓子
部屋の隅や寝具の間では、スナック菓子や清涼飲料水のほか、スマートフォンや携帯ゲーム機などの電子機器などを見つけることがある。危険性があるものも含まれるため、物品の利用には細心の注意が必要である。
スナック菓子
最も一般的にみられる菓子類には、言語や細かい表記にブレがあるものの、概ね以下のような文句が外装に記されている。
★思い出しマークを集めて、裏側に応募しよう! 安眠していて安全なお菓子です。空の青さから伸びてくる長い手のような優しい味覚に仕上げられました。親しい人たちが大切に育てたこども達を、他人が機械を使って美しい夢にしたのです。記憶のうらがわにある襞をくすぐるようにして、あなたは聞き分けよく慶びを理解しています。瞼の床に就いて、覚めない為のねむたさをお愉しみください。
このようなスナック菓子は安全に摂取することができる可能性が高い。ただし、発見時に開封済みであったり、上記以外の文字列が記されていたり、箱形の外装に入っていたりするものには、およそ食用ではない素材が混入している場合がある。
飲料
水、果汁、炭酸飲料、スポーツドリンク、その他の飲用に適さないものも含めた液体が入っているペットボトルである。スナック菓子と共に発見されることが多い。栄養成分表示には「はいまく質体」という詳細不明な物質が必ず記載されているものの、これが原因だと思われる健康被害は報告されていない。
内容物としては通常の水や清涼飲料水が一般的である。アーモンドウォーターやココナッツコーラといった様々な種実類フレーバーが比較的よく見られるものの、支配的な出現頻度ではない。睡眠薬が溶かし込まれているものが稀に存在するが、原材料の表示によってこれを見分けることが可能である。
飲用に適さないものとして、洗剤や各種のインク、腐食性の強い橙色の液体などがよく見られる。これらはそれほど高い頻度で出現することはないものの、通常の飲料と外装がよく似ている。最も危険な例では、異臭のする液体がペットボトルを溶解させて漏れ出ていたという報告も存在する。ペットボトルを手に取るならば慎重になるべきである。
電子機器
この階層で見つかる電子機器は未知のネットワークに接続する
スマートフォンやタブレット端末、携帯ゲーム機のようなモバイル機器が配置されていることがある。これらは現実世界のブランドや製品に類似した形態的な特徴を持つが、必ずしも電子機器に似ているとは限らず、例えばスナック菓子の外装に似た形態であることもある。
端末内にはテキストエディタやゲーム、ブラウザや使途不明のアプリケーションが導入されており、支離滅裂ではあるが一定の文脈を感じさせる自動筆記的な文字列で埋め尽くされている。SNSアプリは正常に機能していないようだが、ブラウザによって現実世界のインターネットではない不明なネットワークに接続することが可能である。端末のものと同じく、このネットワーク上を流通しているファイルは夢や寝言のように支離滅裂である。ネットワークではバックルームに関係するものと思われる未知の情報も配信されているが、その異常性によって解釈が困難であり、その信憑性も不確かである。この通信に利用されている電波は通常の電子機器で観測することが出来ない。
端末内の画像や動画ファイルは、その意味内容によって概ね2種類に分類することができる。ひとつは、眠っている人間や動物の姿を写したものである。ほとんどがこの階層内と思われるロケーションであるが、一般的な寝室や電車、森林で撮影されたようなものも報告されている。端末を発見した放浪者が Level 92 N で眠っていないにもかかわらず、この階層で眠る自身の姿が撮影されていたとする事例も存在する。もうひとつは、夢のように不条理で超現実的な現象の記録である。よく見られる類型として、生物や物体が浮遊している様子が挙げられる。生物や機械が違和感のある動作をしていたり、継ぎ接ぎされたように画面全体の不整合性が見られたりすることも多い。この特性から、動画ファイルにおいて特に異常性を確認しやすい。ネットワーク上に存在するメディアファイルは端末内のものより多様であるが、概ね同じような異常性の傾向が見られる。
これらの電子機器へと新たに入力したテキストや画像、音声ファイルに異常性は発生しない。ただし、身に覚えのない異常なファイルが新たに追加されることがあり、その内容は機器を携行していた者の経験や事情に関連しているかのようである。
やや天井が低い部屋の様子
補足
何者かによって使用されていた痕跡(人髪など)のある寝具を発見することがある。まだ温かい寝具に出会ったとしても、その付近で他の生物に遭遇した事例は報告されていない。
入口と出口
階層への入り方
- この階層へと入った者の証言では、バックルームを探索中、夢のように不条理な現象が発生した直後に Level 92 N で目覚めたとするものが多い。
- Level 8 N でクッションの中に詰められていた枕を使用して眠ると Level 92 N へ移動するようである。
- 現実世界で睡眠薬を過剰に摂取した後、Level 92 N で目覚めたという報告が存在する。
- Level 113 N の雷雨時に布団の中で息を潜めていたところ、唐突に無音になり Level 92 N に移動していたという報告が存在する。
階層からの出方
- Level 92 N で眠ることで、夢を見るようにして外部の階層へと移動することがある。また、夢の中ではランダムな階層移動が発生しやすいとされる。しかし、この方法で脱出した者の多くが超現実的な出来事や意識の混濁を体験しやすくなり、目を覚ますことによってこの階層へと再び訪れている。
- 異様に低い天井が寝具を押しつぶしている隙間へ入り込むと Level 8 N へ移動する。
- 空間が変動するか、あるいは寝具に外れ落ちることによって外部の階層の寝具がある場所へと移動したとの報告がなされている。この現象の再現性はかなり低いものと思われる。

