Level 840 N の写真。この画像のような空間が何処までも続いている。
Level 840 N とは、バックルームにおける 840 N 番目の階層である。
概要
Level 840 N は白いコンクリートのような壁に囲まれた閉塞感のある屋内に木製の厨子1が左右に並べられた階層である。この空間はおおよそ長方形の部屋らしき造形をしており、一見すると直ぐに厨子の陳列された地点から抜けられるように見える。
階層内の気温や湿度は報告によってかなりばらつきが見られるが、気温は10℃~25℃の範囲と探索において支障となる程ではなく、湿度もまた不快に感じるほど極端に高い、もしくは低いという報告は現時点において存在しない。またこの階層では常にやや強い蜜柑やラベンダーの香りが風に乗って放浪者が向かう方向から漂っている。
Level 840 N の床はザラザラとした質感の赤いカーペットがしかれ、その上を厨子から伸びる電源コードとそれらに電力を供給しているように見えるまっすぐに伸びたケーブルタップによるタコ足配線がのたうった蛇のように散乱している。これらのコードは強い熱を帯びており、不用意に触れると火傷してしまう危険がある。このためこの階層を探索する場合は必ず靴を装着し、可能であれば手袋やマフラー等をまとって露出面積を減らすべきである。
縦方向への無限性について
Level 840 N の前後方向は放浪者が探索している 5m 程度の長方形の部屋の先に開けた空間と壁が存在するように見える。このためこの階層についての知識を持たない放浪者や知っていたとしてもこの階層の性質をその身で理解する前までは進めば直ぐに抜けられるように感じられる。しかし実際はどれだけ進んでも小部屋や壁に接近することはできず、また側面にも別の通路を発見したという報告は存在しない。このため Level 840 N は事実上1本の細い通路が何処までも続いている空間と説明できる。
現在のところ進み続けたことに起因とするこの階層からの脱出報告は存在せず、不必要な疲労や未確定の事象2の報告もあるため脱出先の危険や不快感はあるものの下記に示す脱出方法を試みることを推奨する。
「厨子」について
一人の放浪者によって動かされた厨子の内部を撮影した写真。中には腐った洋梨と線香、大量の灰が詰まっていた。
Level 840 N の左右の壁におおよそ掌がギリギリ滑り込める程度の近い距離感で等間隔に並べられ、構造から本来あるべき方向から反対に設置されているように見える。一見した見た目として箪笥や収納棚のように見えるが、現状分かっていることは少ない。
厨子について現在分かっている性質を下記に示す
- 電源ケーブルが接続されており、何らかの電力を必要とする設備を持つ。
- 厨子は移動可能だが極めて重く、動かすことは現実的ではない。
- 本来正面であると思われる壁面側に観音開き構造を持つ扉がある3。
- 厨子に耳を当てると日本語に近いイントネーションで何らかの文字列が読み上げられているのを聞き取ることができる。声は小さくくぐもっており機械翻訳のような無機質かつ完全に一定の速度であり、声質としては成人男性の様な低い音である。この声が何を発しているかは不明であるが、長期間聞き続けると精神的、感覚的な異常を引き起こすことが判明している。
精神的な異常について4
前述したように厨子に耳を当て、内部の音を聞き続けることで引き起こる事象であり、主な内容として"漠然とした自分のものとは思えない不安感や不快感としか形容できない感情の発露"と形容されるような「精神異常」と「感覚異常」がある。
「精神異常」については心の底から突然湧き出るようにして現れ、忘れかけていた孤独や帰郷の念とともに漠然とした不快感や希死念慮が心を満たし、「理由すらも理解できないままに涙が止まらず、動くこともできなくなった」と報告されている。この状態について同報告者は「双極性障害におけるうつ症状の最下層と似ている」と形容している。
「感覚異常」 については聞いているうちに徐々に冷たく硬い木の板であるはずの厨子の背面が違うもののように感じられる症状である。具体的には徐々に硬い木は軟らかく、冷たく熱を奪うのみだった表面は徐々に熱を帯びていき、最終的には人肌と相違ない程度の温かく優しいものへの変質していくと報告されている。この感覚について放浪者からは「母親のような私を優しく包む深い愛を感じた」と形容されている。
以上の精神影響から不用意に厨子へ接触するべきではない。しかし現在において確実に階層を移動できる方法は箱に耳を当て続けることのみであるため、この階層に到達してしまったた場合は利用すべきだろう。
物品
Level 840 N には安定的に取得可能な有用な物品は報告されていない。「厨子」の内部には感触によると複数の物品が存在していることが確認されているが、大半が不要ないしは箱と壁の距離、厨子のもつ重量から回収することは事実上不可能である。
感触や目視によって発見されているもの。
- 果実5
- ペットボトルの何らかの飲料
- 何らかの刃物、ないしはそれに相当する鋭いもの
- 線香や蝋燭等、香炉や仏像と思われる物品
- オイルが殆んど入っていないライター
- 箱を開くとともに溢れ出した夥しいほどの灰
備考
現在のところ進み続けた場合に何らかの事態の好転や悪化があったという根拠のある報告は存在していないものの、報告自体は数件存在している。
一つの報告では進み続けると背後から囁かれるような声や視線、足音を感じたとされているが、現在においてそのような事象や実体については未確認である。
入口と出口
階層への入り方
- Level 89 N や Level 789 N 等のコンクリートや石材が構成の大部分を占める階層において狭い通路を進んでいると不意に Level 840 N に到達する場合がある。
階層からの出方
- Level 840 N で見られる「厨子」から響く声を聞き続けるといつの間にか意識を失い、目を覚ますと Level 37 N や Level 200 N 、 Level 216 N 等の屋内や薄暗い階層に到達している。
- Level 840 N にてケーブルに躓き転倒した放浪者が Level 295 N に到達したという報告が存在する。

