Level 831 N
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Wikiスタッフより通達

2025年8月末以降、当階層に到達した者との通信が途絶する事例が相次いでいます。Wikiスタッフは、階層の性質が不安定化した可能性があると判断しました。

以下の情報は、主に2025年8月以前の観測に基づいています。当初の危険度は「1」とされていましたが、現在の変容を鑑みるに、この評価は今後の調査で変更される可能性があります。情報の再検証が完了するまで、当階層への侵入は推奨されません。


危険度: 1
空間信頼性: 不明
実体信頼性: 不明
情報提供待ち

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窓越しに広がる碧空と、薄暗い屋内。

Level 831 N とは、バックルームにおける 831 N 番目の階層である。

概要

Level 831 N は、内部の鉄製回り階段が上下方向にどこまでも続いているかのような、塔状の空間である。等間隔に配置された踊り場と窓枠が、無機質なコンクリートの壁に規則正しく設置されている。窓の外には常に真昼の夏空が広がり、巨大な入道雲が浮かんでいる。入道雲は風を受けて僅かに形を変えるものの、天候や時間帯の変化は認められない。鉄製の手すりは、ところどころ錆びてざらついた感触がする。耳を澄ますと、蝉の鳴き声が遠くから聞こえてくる。ときに風鈴やチャイム、花火の炸裂音に似た短い音が聞こえるが、いずれも数秒で消えるため、発生条件は不明である。踊り場によっては床が水で濡れ、淀んでいる箇所があり、踏むと「ひたひた」という音が反響する。時折、麦茶や線香花火の燃え残りを思わせる匂いが漂う。日本の真夏を想起させる環境だが、内部の気温は20℃前後、湿度は40〜50%であり、外観に反して蒸し暑さはない。

上に行くほど空の青は濃く、雲は盛り上がり、蝉の声は大きく密になり、見つかる物品は未使用で色鮮やかな状態が多くなる。下に行くほど空の色は淡く、雲は崩れ、蝉の声は弱まり、やがて消え、物品は色褪せ、傷み、漂流物となって現れる。Level 831 Nの最下階に到達したという確実な報告はない(ただし、「追記:暫定情報」の項を参照)。

窓外への脱出を試みた場合、例外なくLevel 2.1 Nへと移行することが確認されている。また、チャイムの音や窓外の遥か眼下に確認できる市街地の存在から、当階層がLevel 2 Nと非常に近い場所にある、または副次階層として分類される可能性が指摘されている。しかしながら、Level 2.1 N側からLevel 831 Nは観測できない。

Level 831 N発見当初から、内部の時間が逆流している可能性が議論されていた。壁掛け時計の針は遅々とした速度で逆回転しており、正確な時刻を把握することはできない。この異常性は持ち込んだ時計や電子機器にまで及ぶ。そのため、階層内での経過時間の把握は極めて困難である。しかしながら、空腹感や眠気のような通常の生命活動に変化は見られず、体感時間と脱出後に判明した実際の経過時間との間に、大きな乖離は報告されていない。時間が歪んでいる、または別の時間軸に接続されているという仮説も提唱されたが、決定的な証拠は見つかっていない。当階層を離れる、または物品を直接破壊することで、この時間逆行の影響は消失する。

屋上

階段を昇り続けるにつれて、踊り場の様子は次第に変化していく。窓の外では空が色を深め、入道雲はさらに雄大にその姿を盛り上げ、蝉の声は一層その鮮明さと密度を増す。踊り場に置かれた品々も、未使用の花火、白紙のプリント、未開封の麦茶パックといった、鮮やかな記憶の断片へと変わっていく。空気はかすかに温かみを帯び、乾いた風に甘い線香の香りが混じり始める。

やがて、ひときわ広い踊り場に出る。そこからさらに短い階段を上った先に、外開きの鉄扉がある。扉は微かに熱を帯びており、向こう側からは反響するような大きな蝉の声が聞こえる。

しかし、重い鉄扉を押し開けた瞬間、あれほど響き渡っていた蝉時雨はぱったりと鳴りを潜め、視界に広がるのは、ただ見渡す限りの青い空だった。肌を撫でる風にも、もはや夏の湿った匂いは含まれていない。天頂の太陽が、全てを白く、静かに照らしている。その光は目を細めなければ周囲の輪郭が白く滲むほど強いが、不思議と熱は伴っていない。

屋上は無機質なコンクリートで構成された、がらんとした空間が広がっている。低いコンクリートの縁で囲まれており、その向こうの、遠くには市街地が微かに見えるが、人影や動きは一切ない。ここには物がほとんど見当たらない。踊り場で見られたような花火袋や麦茶のパックはおろか、紙切れ一つ、ゴミ一つ落ちていない。ただし屋上の中央には、木材と剥き出しのパイプを組み立てた簡素な学校椅子が一脚だけ、背もたれが床に接し、座面が空を向いた状態でぽつんと倒れている。

この静かで空虚な空間に立てば、誰もが理解するだろう。それまで踏破してきた階段は在りし日々の追憶に他ならず、辿り着いたこの屋上の光景すらも、美化された夏の日々の、その終着点に過ぎない───と。

この追憶から去る方法は、一つしか確認されていない。縁の向こう、眼下に広がる霧へと身を投げることである。この行為によって、例外なくLevel 2.1 Nへと到達することができる。落下に伴う衝撃はなく、移行は比較的穏やかであると報告されている。

実体

現在まで、明確な実体の存在は確認されていない。しかしながら、階層内における原因不明の音の発生が相次いでいる。いずれも数秒から数十秒で消失するが、探索者を精神的に疲労させる要因の一つとなっている。音の例を報告数の多い順に記述する。

  • 背後から忍び寄るように大きくなる風鈴の音 16件
  • 騒々しいチャイム 13件
  • ビー玉が階段を転がり落ちるような音 11件
  • 反響する複数人の笑い声 8件
  • 花火の炸裂音に似た短い音 8件
  • 窓外から聞こえてくる"張りのある男性の声" 7件1
  • 微かに響くピアノの演奏 2件2
  • カメラのシャッター音 2件

物品

屋上を除く階層全域で、以下の物品が確認される。上層ほど未使用・鮮やかで、下層ほど劣化・汚損が著しい傾向にある。

壁掛け時計

古びた木製の白い時計。前述したように、ゆったりとした速度で全ての指針が逆回転している。実用性は皆無に等しく、時間を把握するのは不可能だろう。

飲食物

踊り場や階段の隅には、空の容器が確認される。例えば、運動会の仕出し弁当のような空の折詰箱、焼きそばのパック、シロップの色だけが微かに残るかき氷のカップなどである。これらの容器は常に空だが、中には食べ物の代わりに、ビー玉やセミの抜け殻、色褪せた写真の切れ端3といった、小さなガラクタが入っていることもある。

飲料としては、炭酸が完全に抜けきったサイダーのペットボトルや、ビー玉が入っているものの決して開けることができない瓶ラムネ、ぬるくて味の薄い麦茶が入った古い水筒などが発見される。いずれも飲用可能だが、期待を満たす味ではなく、後味には微かな苦みや物足りなさが残るという。容器に賞味期限などの表示は一切見当たらない。

学校用の椅子

稀に、屋上の学校椅子と同様のものが、踊り場や階段の途中にポツンと置かれているのを発見できる。時折机と椅子が積み重ねられ、通路を塞いでいる事例も少数ながら報告されている。

入口と出口

階層への入り方

  • Level 2 NLevel 51 N で、更衣室に不自然に接続された回り階段を上ると Level 831 N に到達する。
  • Level 333 N で、風鈴の鳴る方向へ歩き続け、コンクリートで舗装された一角に設置された鉄製の扉を通過すると Level 831 N に到達する。
  • Level 888 N の不活性エリアを探索中に Level 831 N に到達した旨の報告が存在するが、信頼性に乏しい。

階層からの出方

  • Level 831 N で、踊り場の窓および屋上の縁から青空へ身を投げると、 Level 2.1 N へ到達する。

追記:暫定情報

前述の通り、2025年8月末以降、Level 831 N 内部で消息を絶つ探索者が増加傾向にあります。階層の性質が何らかの変化を遂げた、あるいはこれまで知られていなかった危険性が顕在化した可能性が高いと判断され、現時点での探索は極めて危険であり、推奨されません。

この変化と関連があるかは不明ですが、2025年8月中旬から下旬にかけて、当階層の最下層に到達したという情報が、画像などの明確な証拠がない形で4件報告されています。この報告の信憑性は現在も検証中ですが、報告には矛盾や差異があり、以下は共通または頻出する要素を抽出したものです。

最下層には窓がなく、外光源は一切確認されていない。それにもかかわらず完全な暗闇にはならず、壁や天井には水面の反射光に似た揺らぎが一定周期で走る。この揺らぎは約10秒ごとに明滅し、順序や強弱は常に同じで乱れない。光源は特定されていない。

床は腰ほどの高さまで、澄んだ水で満たされている。水面はほぼ静止しているが、約20秒ごとに小さな波紋が規則的に発生し、自然に消える。この波紋は外的要因なしで生じ続ける。発生とほぼ同時に、上層で観測される音が変質して現れる。蝉時雨は止み、低い音で引き伸ばされたチャイムが響き渡る。その音は校庭の拡声器を通した放送に似ているが、明瞭ではない。音は壁面で半拍遅れて反響し、やがて消える。

水面にはほぼ2分間隔で小さな漂流物が浮かび上がる。内容は、削られた短い鉛筆、赤い厚紙片、色褪せた折り紙、煤けた花火の柄、判読できない文字の滲んだ紙片4などが多い。これらは数分で沈み、沈んだ後は再発見されない。出現の順序や組み合わせは一定しておらず、漂流物の発生が何らかの目的に基づくのかは不明である。

この場所から他階層へ移行したことを裏付ける報告は皆無です。既知の到達者はいずれも短時間で最下層を離れており、長時間滞在時の状況は不明のままです。


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