Level 83 N

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早いうちに家具付近を探し回ってスイッチを見つけてください

もしあなたが Level 83 N でこの記事を読んでいるのならば、
テレビの明かりを頼りに家具付近でスイッチを見つけてください。
この階層での長期滞在は肉体や精神に異常をきたす要因となります。そうなる前に落ち着いて記事を読み、可及的速やかに階層からの脱出を試みてください。


危険度: 2
空間信頼性: 安定
実体信頼性: 実体なし
情報提供待ち

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Level 83 N のテレビを写した画像。

Level 83 N とは、バックルームにおける 83 N 番目の階層である。

特記事項

Level 83 N へ到達する際には例外なく同行者との分断が発生する事が判明している。中には「全員が散り散りになっていたが、各々が個別にこの階層を後にしてからしばらく経った頃に不明な要因で他の階層にて合流を果たした」という報告まで存在する。この報告の真偽のほどは定かではないが確かな事として、これまでこの階層に複数人で到達した旨の報告は存在しない。

概要

Level 83 N は、とてつもなく膨大な暗闇に吞まれた中で、一般的な家庭のリビングを構成するような家具・インテリア類が一箇所にかたまり、いくつもまばらに分布しているといった様相を呈する空間である。この階層には壁や天井といった仕切りが一切存在しないが、暗がりで隠れてはいるものの平坦で信頼の置ける地面だけはどこまでも広がっている。そのため階層内は開放感のある空間となっており、地面に寝そべって夜空とも天井ともつかない方向を仰ぎ見ればふと満天の闇と目が合うだろう。階層内はいつでも静けさに支配されている。

なお、この地面はリノリウムという床材でできており、顔を近づければほのかに香る程度にその特有の匂いを周囲に発している。その滑らかなコーティングが施された表面は、常に冷え切っているため素足でその上を数十分ほど歩けばたちまち足が冷えてしまう。そのため、立ち止まる際は足元に敷き物を使うか、出来るなら履き物を事前に用意しておくと無駄に体力を奪われずに済む。なお、地面には凹凸が一切なく放浪者の歩みを妨げるような物はこれまでに何一つ報告されていないが、どうしても不安が募るのならば摺り足で暗がりに埋もれた足場を一歩一歩確認しながらリビング間を渡り歩くのが無難だろう。

Level 83 N では、気温は体感15℃~20℃程度の間を彷徨っており、防寒具の使用を必要とするほどではないが、素肌にとって薄ら寒いのは間違いない。空気はひどく乾燥している上にやや埃っぽい。これはすぐに放浪者の呼吸を困難にするほどではないが、長い間このような環境下にあったであろう確認可能な家具はその殆どが埃を被っている。長丁場が予想されるならばハンカチなどで口を押さえるなどして埃を出来る限り吸い込まないよう心掛けておくべきである。なお、過去に階層内に持ち込まれた温度計・湿度計はいずれも測定の末に温度「46℃」や「-37℃」、湿度「89%RH」などと出鱈目に感じられるような数値を割り出している。そのため、この記事では放浪者の証言から得られた体感データを優先して記載している。

Level 83 N では階層からの脱出が容易ではないのに対して手に入る有用な物品は少ないなど、複数の理由からこの階層への到達は基本的に推奨されない。なおこの階層では飲食物を一切調達出来ないが、以下の特性があるため生存には問題ない。

Level 83 N に滞在している間、放浪者は空腹感を覚えたり栄養失調に陥る事がなくなる。これはこの階層特有の性質であり、滞在者は自然と「満ち足りた気分でいっぱいになった」とも称されるような感情を抱く事が分かっている。この性質により、いくら飲まず食わずでも餓死する心配はない。

しかし同時に、摂食を行おうにも食事が喉を通りにくく、飲み込んでもそのうまみを十分に味わう事が出来なくなるという性質も持っているようであり、また飲み込んだ食べ物や唾液などが気管に入る事でむせてしまう恐れもある事から無理して飲食物を摂取する行為は避けるべきである。「生存のために摂食を控える」というのは放浪者の普段の感覚からすると耳を疑いたくなるような事実だろう。


暗闇

Level 83 N には「一寸先は闇」を体現するが如く際限のない真っ暗闇が広がっており、光源から少しでも遠ざかれば視界は一瞬にして暗がりに占拠される。暗闇は常に夜明け前のぼんやりとした空模様のような明度を保っている。そのうえこの階層では光源が殆ど機能しない。これは、この階層で暗闇へ向けられた光は不明な要因により例外なく床や家具へ届く前に光量を大きく減衰させ、ほどなくして闇に溶け込んでしまうためである。そのため、この階層では深淵の先を照らし出す事はおろか必要最低限の視界の確保さえも困難となっている。

Level 83 N の暗がりでは、不気味なほど粛然とした静寂が常に維持されており、放浪者はここに留まる限り常に静寂と孤独感に苛まれ続ける事となる。留まり続けた結果、放浪者はそのうち自らの足音や衣擦れ、呼吸音、そして絶え間なく脈打つ心臓とその鼓動による心音しか耳に入らなくなる。こうした無音状態は放浪者の精神に異常をきたす恐れがあり、例を挙げるとすればパニック発作や強い不安を引き起こすなどがある。そのため、対策として定期的に自身の耳元で手を叩いたりする事で断続的であっても音を立てるよう心掛けるべきである。こうした対策を怠った放浪者の中でも特にひどい事例では、ハム音にも似た耳鳴りをかなりの長時間経験した放浪者も少数ながら存在する。なお、これらの症状はリビングにてテレビから垂れ流されているBGMを耳にする事で緩和ないしは回復可能である。


家具・インテリア類

Level 83 N で見られる家具の様式は報告例によって異なるが、主な組み合わせとして以下のものを含んでいる場合が多い。テレビの明かりの下で得られた、家具についての情報を可能な限り以下にリストアップする。

代表的な家具・インテリア類:

  • テレビの明かりを受けて鈍く光る革製のソファ。座面のクッション性は非常に悪い
  • 陶器製と思しき白い植木鉢。造花の観葉植物が植えられており中に軽石が敷き詰められている
  • 粗末なつくりの木製テーブル。灰皿をいくつか背中に乗せながら短い4本脚で立っている
  • 毛羽立った、不安定で座り心地の悪い座椅子
  • 子どもの背丈ほどある大きさのクマのぬいぐるみ。部分的に生地が裂け、中に詰められた綿やスポンジ、ビーズなどが周囲に溢れかえっている事もある

このように家具は多くの場合、辛うじてくつろげる程度の品質しか持ち合わせていない。しかしその一方で、ソファの背もたれや肘置きに寄りかかる形で毛玉のやや多い衣類が放置されていたり、テーブルの上にタバコの灰のようなものがなみなみ注がれたコップなどがいくつか並べられていたりと僅かながら生活感を感じさせる一面も時折見せている。

家具のかたまり1つにつき1台、後述するテレビが必ず存在する。これらは例外なく電源が点いたままで、暗闇の中、この画面の発する光のみが一方向に伸びており、他の家具や床を部分的に照らしている。これが唯一この階層元来の光源となっており、放浪者が家具のかたまりの位置を知るための手がかりにもなっている。

テレビの明かりは、俯瞰してみればまるで闇夜に瞬く星々のように暗がりの中で点々と散らばり輝いているように見えるだろう。また、次第に放浪者の身体に纏わりついてゆく暗がりは、何かを包み隠すでもなくただ辺りを漂うのみであり、これらは重なり合う事で幻想的でありながらもどこか寂寥たる眺めを形作っている。

中でも特筆に値する家具については以下の文章で述べる。

テレビ

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Level 83 N のテレビ。

Level 83 N で自重を支える台(テレビボード)とともに幅広い種類の型の存在が発見/報告されている家具であり、この階層を強く印象づける物の一つ。報告される型には個体差があるものの、どのテレビ画面も一貫して現実世界のアニメないし映画作品のDVDのメニュー画面を後述のBGMとともに延々と映し出している1。これとは別に、極稀にだが、まるで意図の掴めないような映像のみがループ再生されている事もある。

テレビの表面には電源ボタンが存在しないため、後述のリモコンなしに電源のON/OFFや音量を切り替える事は出来ない。また、背部に伸びているはずのアンテナケーブルらしき物が見当たらない事から察するに、テレビは現状どこからも電力を供給出来ていないはずである。にもかかわらず、映像が途絶える事は決してない。

テレビ画面には稀に、DVDビデオのロゴマークが画面上を移動しながら、端で跳ね返って自身の色を変えるという動作をただひたすらに繰り返す、いわゆる「DVDスクリーンセーバー」に酷似した挙動も見られる事がある。

テレビ画面の一例:

全編再生
チャプター(シーン)選択
設定
ムービー

前述したように、Level 83 N のテレビは常に自身の背面/底面に取り付けられたスピーカーからBGMを延々と垂れ流している。流れているBGMはテレビによって異なるようで、このBGMはテレビの近くに行かない限り聞こえない。静寂と暗闇に包まれた中、聴き慣れた、或いは心地よいBGMのみが繰り返し流れるその様子はその場に居合わせた放浪者に充足感や安心感かはたまた欠落感や虚無感、孤独感かを抱かせる事がある。BGMはループ再生されるが、ループの途切れ目では辺りを包んでいる静寂がよりいっそう際立つ事が知られている。

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ひとりでに揺れ動くブランコを映しているLevel 83 N のテレビ。

Level 83 N のテレビには発見した時点で画面にノイズが走っているものもある。これらは放浪者が接近すると大抵の場合途端に映像が通常のものへと切り替わる。ものによっては一定時間経つと自動的に「ALL PLAY」「すべて再生」ボタンなどが選択され、放浪者の目の前で映像が勝手に動き出す事がある。しかしそのまた僅か数秒後、一瞬ノイズが走ると同時に映像が切り替わりメニュー画面に再び戻ってきてしまう。

上のような事例では放浪者を驚かせる結果になる事が多く、実際に出くわした放浪者によればその場に茫然と立ち尽くしたまま目が画面に釘付けになり、生きた心地がしなかったそうだ。そのほか思考が止まったり、激しい動悸を感じるとともに冷や汗が止まらなくなったり、視野異常2が生じたり、急にテレビから漏れ出るBGMが聞こえなくなって隔絶感を抱いたりしたなどと具体的な症状も個別に報告されている。そのまま視聴を続けているとそれらの症状はある程度まで落ち着いてくるが、それと引き換えに脱力感や倦怠感を新たに覚える放浪者も一定数存在する。

再生中、画面の前の放浪者は足がすくんでその場から一歩も動く事が出来ないとされる。そのため、それから急に立ち上がるなどして体を動かそうとした際に足がつり3やすい傾向にあるため、しばらくの間はその場でゆっくりと筋肉を伸ばし、血行を改善してから体を動かす事が推奨される。症状がひどければ軽いめまいとともに目の前が真っ暗になってしまう場合もある。

おぼつかない足取りでその場を離れた放浪者であっても、症状はすぐには回復しないため自身の頭は変わらずぼんやりとしたままであり、自身の注意力が普段よりも散漫になっている事を自覚するべきである。その上で次なる危険に注意を向けてほしい。

そうして放浪者が呆気に取られている間にもBGMは流れ続けており、嫌でも耳の中に入り込んでくる。そのためだろうか、階層を後にしてからしばらく経ってもなおBGMが耳にこびりついて離れないという報告が後を絶たない4

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遠くの方で光るLevel 83 N のテレビ画面。

テレビボード

テレビを下から支えているテレビボードには必ずDVDプレイヤーが収納されているが、その他に数種類の子ども向けと思しき玩具を入れた竹編みのかごも見つかる事がよくある。この玩具の山に本物のトランペットやタンバリンなどが紛れ込んでいる事も極稀にある。

他にも、メガネケースの中に入れ子構造をとるようにして入れられたコンタクトレンズのケースや全面同色のルービックキューブ、空気の抜けた柔らかいボールといった一見して無意味に思える物品をはじめ、カラカラに乾いたウェットティッシュといった本来の機能を果たせそうにないような少し頼りない日用品や現実世界では見慣れないようなゲーム機・ソフト、ケーブル類などのテレビ用品、新品同様の状態を保ったアルバムなども見つかったりする。なお、メガネケースとコンタクトレンズのケースはどちらもメガネ拭きの布(セリート)やコンタクトレンズの洗浄液(保存液)を除けば中身は空っぽであり、これらはとても有用であるとは言えない。しかし、竹編みのかごを漁った際に危険性のある物品が見つかったという報告はないため「テレビを見つけたついでにテレビボードの収納物も暇つぶしがてら見ておこうかな」程度の認識で居ても構わないだろう。

確認されるDVDプレイヤーの中には稀にCDやブルーレイなどに対応している機種もあるようだが、表面を調べてもディスクトレイの開閉ボタンらしきものは見当たらず元から入っているディスクを引き出す事が出来ない。そのため、テレビとともに階層外へ持ち出したところでいつもの決まりきったBGMを流す事しか出来ずこれもまた有用であるとは言えない。DVDプレイヤーの近くで耳を澄ませば、中でディスクが擦れながら回転する音を微かに聞く事も出来るだろう。

リモコン

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見つかったリモコン。

Level 83 N の家具付近をテレビの明かりを頼りに探索していると、家具の隙間などの暗がりでポツンと光っているリモコンと遭遇するかもしれない。しかしこのリモコンを操作して電源のON/OFFや音量を切り替えようとしても、電池が入っていないため叶わない。他の階層から持ち込んだ電池を入れれば問題なく使用できるが、電源のON/OFFの切り替えに関してはテレビの明かりという極めて貴重な光源を自ら絶ってしまう事に他ならない。そのため、行うのは音量の切り替えまでにとどめておくのが賢明だろう。なお、挙げたもの以外の操作(チャンネルの切り替えなど)は電池の有無にかかわらずそもそもボタンが反応しないので、こちらは完全に不可能とされている。

コンセント

Level 83 N 内を探索していると、概ね一定の確率でコンセントが発見される事がある5。試しに使用した放浪者によると、所持していた端末を充電しようとして充電ケーブルのプラグをコンセントに挿し込むも、予想とは裏腹に吸い取られているかのようなバッテリーの急激な減りを実感するばかりだったという。この事から、もしコンセントを見かけても使用する事は避けるべきだろう


構造物

受付・待合スペース

Level 83 N 内を暫く探索していると、稀に遭遇する事がある構造物である。その名の通り受付と待合室が合わさったような様相を呈しているが、前述した「この階層には壁や天井といった仕切りが一切存在しない」という特徴はこの構造物も例外ではない。この構造物を構成するのは黒電話やペンスタンドに立て掛けられたカラスのものと思しき羽根6などを載せたL字型のカウンター、横に数列並べられた背もたれのない長椅子のみである。

放浪者が黒電話にちょうど接近したタイミングで電話がかかってくる事がある。しかしこの電話に出たところで自動音声での応答があちら側から返ってくるだけであるため、特段気にする必要もない。

カウンターの内側にはパイプ椅子が設置されてある。これだけは埃をかぶっていないようである。なぜかその座面は人肌ほどの温もりを帯びており、僅かに凹みが見られる事からも「直前までそこに何かが座っていたのではないか」としばしば未知の実体の存在を指摘する声も上がっている。

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テレビの背後に受付所のカウンターが立っている稀有な事例。床にカーペットが敷かれてあるのが分かる。


精神影響

Level 83 N での滞在期間は放浪者によってまちまちである。連絡の途絶から数日ほどで他の階層へ移動出来た者もいれば、極端な事例では半年以上階層内を彷徨い続けた者も存在する。ここでは、Level 83 N での滞在が放浪者にもたらす主な影響について語らせてもらう。

Level 83 N で一定時間を過ごした放浪者はこの階層に組み込まれた単調なサイクルに嫌気が差し、次第に「ここから出たい」という焦燥感に駆られてゆく傾向にある。しかし実際にはどうする事も出来ず、ただ自身の中でふつふつと湧き上がる苛立ちを抑え込む事に注力するようになる。

それから放浪者はこの階層に長きにわたって留まる中で、流れが緩やかで変化も何もない真っ暗闇よりも鮮烈な刺激のある、人工的でなく自然由来の光に包まれた明るい空間に心から強く焦がれてゆく。液晶から発せられるブルーライトよりも太陽光を求めるようになる。

Level 83 N に滞在しても、だだっ広い空間なはずなのに何処へ行っても暗闇にぶつかり、やっとの思いで暗闇から逃れたとしてもテレビの鬱陶しいほど眩しい明かりや味気のない映像と無機質なBGMに出迎えられるだけである。

Level 83 N はそのような反復する事象に囚われた空間であり、放浪者に時間が止まっているかのような錯覚をさせる事もある。しかしそれなのに無情にも実際の時間は過ぎ去ってゆくという、とても空虚な空間でもある。放浪者はそのうち繰りかえすパターンに意識を向ける意味を見出さなくなり、諦めの境地に立たされた頃には考える事を完全にやめるようになる。

経過した時間に対する感覚が徐々に、しかし時間をかけて確実に狂ってゆきしまいには自身の確固としていたはずの輪郭さえも揺らいでしまう。この傾向は腕時計といった時刻を知らせる物品を一つも身に着けていなかった放浪者に顕著に見られる。諦観の姿勢が板についた頃にはもう遅く、もはや自身の生きる理由さえも忘れてしまいそうになっている。

Level 83 N に来てから経過した時間について漠然とした予想すら立てなくなった放浪者は、この階層の、或いはこの定型化された一定周期の一部になってゆく感覚を抱いても不思議ではない。この頃になると、ひとりきりで塞ぎこんでいるうちにふと「いっその事自ら命を絶ってしまおうか」と本気で思い詰める放浪者も現れ始める。そして「空腹感を覚えたり栄養失調に陥る事がなくなる」という利点だと思っていたこの階層特有の性質は、今となっては自身に苦痛を与える事にしか役立っていない事に気づく。


家具類

スイッチ

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宙に浮いているLevel 83 N のスイッチ。

Level 83 N 内で探索していると、極稀に遠方にテレビの明かりとは異なる、緑色をした明かりが見えてくる事がある。群れからはぐれたかのように家具から若干離れたところでポツンと宙に浮いているその姿に、興味を惹かれた放浪者はそれに向かって近づいていく。手で触れればすぐにそれがスイッチであることが分かる。これに指を添えて、希望を込めながらほんの少しだけ指先に力を加えるとこの階層の様相は一変する。




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スイッチを押す。




リビングルーム

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Level 83 N のリビングルーム。

Level 83 N のスイッチを押す事ではじめて辿り着く事のできる空間である。あなたがスイッチを押すとほぼ同時に、目を眩ませるような強い光がいきなり視界に入ってくる。思わず目を細めつつも辺りを見回すと、目を疑うような光景がそこに広がっている。その様相はもはやだだっ広い暗闇などではなくなり、現実世界の明るいリビングルームのようなものにいつの間にか様変わりしている。なお、当然だがこの空間には壁や天井が存在する。床の様子もがらりと一変しており、これを瞬間移動したと捉える放浪者も一定数存在する。

今か今かと待ち侘びていた、ループから抜け出す瞬間。放浪者はあの暗闇から出られた喜びで居ても立っても居られないだろう。

現時点で判明しているリビングルームについての詳細な特徴を以下に示すが、あなたが実際に目にする内装や間取りなどは過去に報告されたものとは多少なりとも異なるため、以下に述べる特徴全てが必ずしも当てはまっているという保証は出来ない。ここでは要点のみをかいつまんで大まかに説明する。

まず、この空間ではリビングルーム以外の構造は確認されていない。というのも、リビングルームと他の部屋を繋いでいるであろう箇所には土壁と思しき分厚い仕切りが通り道を塞ぐようにして塗り固められているのである。これは、ドアを開くとその先にドア枠いっぱいに塗り固められた壁が姿を現すといった具合である。なお、この仕切りを壊す試みは現在まで1度も成功していない。そのため、仕切りの先はどうなっているのか、そもそも仕切りの向こうに空間など存在しないのか、などと未だ不明な点も多い。この仕切りによって必然的に探索範囲がリビングルーム内に絞られてしまうため得られる物資も乏しく、もしあなたがキッチンの冷蔵庫の中身などを期待しているのであれば物資調達は断念せざるを得ない。

なお、屋内に通じている通り道は仕切りで完全に塞がっているが、屋外に通じているドアや窓などは問題なく利用可能である。これらを通じて外に出ると Level 412 N への階層移動が発生する。これがこの階層唯一の脱出方法である。

広さについて、一般的な家庭のリビングルームとしてみれば特に違和感はないが、つい先程まで無限に広がる空間にいた事もあってかこの有限の空間を若干狭苦しく感じる放浪者も多いようだ。

また、先程まで眩い光や和やかなBGMを発していたテレビはリビングルームに移動した途端にうんともすんとも言わなくなり、暗くなった画面を少しうつむき加減に支えながらテレビボードにずっと居座っている。放浪者がリモコンを向けて操作を試みても反応を示す事はなく、画面はどこかの暗闇を表示し続けている。

この空間を明るく保っているのはテーブルの上で燦々と輝くLED電灯だったり、はたまた窓ガラスからカーテン越しに漏れ出る日差しだったりと様々である。だが決してテレビの明かりではないのは確かである。

このように、気づいた頃には既にこの階層内のがらんとしていた雰囲気は明らかな変貌を遂げている。

余談だが、その存在が初めて発見されたばかりの頃、この空間はLevel 83 N とは別の通常階層として登録されていた。しかし、多くの放浪者がこの空間についての新たな情報を持ち帰ってくるようになるにつれて、この空間には先程までいた階層の名残が色濃く見受けられる事もあると分かったため、自然とウィキスタッフの間でこの空間の取り扱いについて今一度議論する流れとなった。これに際して「副次階層として改めて登録する」という案も出ていたが、そもそもLevel 83 N から脱出するにはこの空間を経由する必要があり、尚且つこの空間に立ち入る方法はLevel 83 N に依存するもの以外には発見されていない事から両者の間には密接な関係が存在すると判断され、現在では同一のページにて掲載される運びとなった。


備考

  • 元々暗所恐怖症を患っていた放浪者が、この階層を訪れた事をきっかけにこの病気を克服した事例が数件のみ確認されている。しかしながら、別の報告者には孤独恐怖症を新たに発症したり些細な物音にも敏感になったりした者も存在する。どちらもこの階層の効果によるものかどうかは未だ検証出来ていない。
  • 夜盲症とは明るいところから暗いところに入った際、すぐには何も見えないがしばらくすると暗さに慣れて周囲が見えてくる事を言うが、これがうまく機能しなくなり暗いところや夜に見えにくくなる病気、いわゆる「夜盲症」を発症する者もこの階層を訪れた放浪者の中で最近増加傾向にある。
  • スイッチを押した際、下の画像のような何か座標を間違えたかの如き奇妙な構造が生成されたとの報告がある。幸いな事に報告者の腕が生成に巻き込まれる事はなかったが、放浪者はスイッチを押す際にも十分に注意を払う必要があるかもしれない。
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スイッチを覆い隠すようにして生成された奇怪な戸棚。

  • Level 83 N で一度リビングルームから出てしまうと引き返す事は出来ない。また、この階層へ訪れたことがある放浪者が脱出後に再度この階層へと到達した旨の報告は存在しない。




入口と出口

階層への入り方

  • Level 81 N の暗い領域内で轟音が段々と遠のいていくとともに何処からかかすかに聞こえてくる和やかな雰囲気のBGMを感じ取ると、どこかで足を踏み外すようにして Level 83 N に到達する。
  • Level 409 N にて客室の壁に設置されてあるテレビで未知の教育番組を暫く視聴していると、突然画面が切り替わりインフォメーション7が映し出され、その数秒後には Level 83 N のテレビの正面に到達している事がある。
  • Level 549 N で「手探り状態で落ちていたリモコンを拾ったところ、それを手に握ったまま Level 83 N のソファの上へ到達した」という報告が数件存在する。
  • Level 199 N で、敷き詰められているクッションマットを取り外し、露出したフローリングの床に向かって外れ落ちると Level 83 N に到達する事がある。
  • Level 213 N で一般的な家庭のリビングのような構造を見つけ、埃の積もったテレビに向かって外れ落ちると Level 83 N に到達する。

階層からの出方

  • Level 83 N のリビングルームで塞がっていないドアや窓から外に出ると気付いた時には Level 412 N の明るい部屋でテレビを離れた位置から眺めている。なお、Level 412 N は入口と出口からしていわゆる"行き止まり"のような位置づけの空間であるが、Level 83 N から到達した場合は例外的にLevel 412 N から Level 70 N といった他の階層に到達するようである。こちらの到達先には規則性は見られない。
  • つまり総括すると、放浪者はLevel 83 N から Level 412 N を経由して他の不特定な階層に到達する事になる。
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