Level 771 N
評価: +29+x
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危険度: 3
空間信頼性: 不安定
実体信頼性: 実体なし
情報提供待ち

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Level 771 N の典型的な風景

Level 771 N は、 The Backrooms における 771 N 番目の階層である。

概要

Level 771 N は、ただ一つの部屋でありながらも、その様相が滑らかに変動し続ける空間である。四方すべてがアイボリー色の壁に囲まれており、無機質に並んだ蛍光灯が全体を照らしている。外部に繋がる扉は存在せず、生暖かく息苦しい空気と相俟って、いやに閉塞感を感じさせる。

この階層の内部の物体は、絶え間なく、ゆっくりと歩くような速度で、ある一定の方向へ移動し続けている。当然、その先には壁があるのだが、それにぶつかることはなく、ただすり抜け、その向こう側へ消えていく。それを埋め合わせるかのように、新たな物体が反対側から現れる。どのような物体が現れるのか、それを予想することはできず、あなたの思いもよらないものと出会うことになるだろう。

この階層の床は、二つの動きの状態が重ね合わせになっているようであると、よく言われる。つまるところ、わたしたちが地に足をつけて立つ普通の床と、その他の物体を載せて常に移動し続ける床の、二つである。わたしたちが部屋の中へ留まるためには、ただ立っていれば良いだけである。一つのボールが部屋の中へ留まるためには、常に其の場で転がり続ける必要がある。

わたしたちが持ち込んだ物体も、自分の身につけていなければ、例外ではない。リュックを床に置いて、少し目を離せば、それは少し離れた場所にある。そのまま見ていれば、壁の中へ消える。わたしたちが身につけていれば、そうはならない。どうやら、自分の身体の一部として感じているかどうかが重要らしい。

こちら側に向かってくる物体を避けなければ、その物体と壁の間に挟み込まれることになる。軽い物体であれば、押し退ければいいだけである。重い物体であるならば、そうとは限らない。滑りやすい物体であれば、なんとか逃れることができるであろう。滑りにくい物体であれば、命を落とすかもしれない。見た目から予想できないような重さの物体と遭遇することもあるため、警戒しなければならない。不自然なほど巨大なバスケットボールの皮を剥げば、その内側には鉛色の金属の塊が隠れているかもしれない。

食べ物が現れたならば、それを安心して食べても良い。そのまま食べたり、あるいはポケットの中に詰め込んで外へ持ち出したりしても、何も起こらず、そのままである。だが、これらの食べ物も常に移動し続けているから、鞄の類がない場合、目の前に大量のケータリングが現れたとしても、手に持てる量しか持ち運べない。

頭上から発せられる空気の唸るような音は、業務用エアコンによるものであるから、あまり気にしない方がよい。この空間に入った瞬間、天井に備え付けられたスピーカーから聞き取りやすい女性の声で「終業時間まで、あと 10 分です」とアナウンスが発せられたという報告が稀にあるが、これにより何かが起こるというわけではない。

約一時間ほど滞在し続ければ、後の節で説明するように、わかりやすい出口が出現するようになるので、そこから出ることができる。それは、最低でも一時間ほど新しい物体に対して警戒し続ける必要があるということである。無駄に大きく動こうとはせず、時には座りながら耐えるのが良いだろう。

物体

Level 771 N の内部で遭遇する物体について、生き残ることの助けになることを願い、実際にあった報告を、以下の通り書き並べることにする。

  1. 縦長のロッカーが現れて、その裏に回り込むと、もう一つのロッカーが背中合わせになって置かれていた。カラフルな紙吹雪が、その隙間に挟み込まれていた。

  2. キャスター付きの台の上に置かれたプロジェクターが現れた。わずかに色づいた白色の光が、どことも知れない国の天気予報を映し出していた。衛星画像の大部分を渦巻き状の雲が占めていた。

  3. 10 セットのビジネススーツが綺麗に折り畳まれた状態で積み重なっていた。何か物資が入っていないかと探ってみると、それらすべてに古びた楽譜が折り込まれていた。

  4. 2000 年代のラップトップコンピューターが独りでに動いていて、荒れ果てた印象を受ける野原の画像を映し出していた。

  5. 数十本のバールが入っている黒いプラスチックのバケツが現れた。それに続いて、何らかの道具により叩き壊されたかのように一部分が欠けている精悍な男性を象った大理石による彫刻が現れた。

  6. 金属製の重厚な 3 台の事務机が並んで現れ、その上には漉し餡で包まれた餅が皿に載せられていて、たいへんおいしかった。

  7. 1 台だけの事務用のラックがぽつんと立った状態で現れ、その中がファイルで詰まっていたので、その中身を覗いてみたら、それらに入っている紙のすべてが、原色のペンキをぶちまけて重ねたかのような模様となっていた。

  8. 約 50 cm ほどの金庫が壁の中から現れて、その扉が既に開いていた。その金庫の中にはシルクのようにきめ細やかな糸が何重にも張られていて、まるでわたあめのようだった。

  9. ホワイトボードに複雑な数式らしきものが書かれているのだが、その意味を理解しようとしているうちに、そのまま壁の向こう側へと消えていった。

  10. 大量の新品の鉛筆が床に散らばった状態で現れた。それを見送ると、今度は大量の万年筆が同じように現れた。

  11. ひとつひとつにアルファベットが書かれた正方形の小さなカーペットが集まり、スクラブルの途中経過を形作っていた。カーペットの周囲をパイロンとコーンバーが取り囲み、そこが工事現場であるかのように規制していた。 "FORTY" という単語だけが印象に残っている。

  12. 灰色のコードが差し込まれたコンセントが床に現れ、そのコードの根元がコンセントと共に壁の中へ消えていった後も、そこから伸びるコードが床の上を這い回るかのように曲がりくねりながら現れ続け、そこから 30 分ほど経った後に、まるでコードに引っ張り込まれるかのように壁の中から業務用掃除機がキャスターを転がしながら出現した。

  13. 1 ドル硬貨が床の上で碁盤状に並べられており、その表裏がリバーシのゲームの途中経過であるかのようになっていた。

  14. 白い看板を持ってパイプ椅子に座っている大人の背丈ほどのマネキンが出てきた。その看板には "200 メートル先" と印刷されていた。

  15. 大量の水が入ったビニールプールの内側に、一人用の高級ソファが置かれていて、その上にフランス人形が座っていた。プールの中には手のひらサイズのテトラポッドが無数に沈んでいた。

  16. 丸い鉄板と長方形の鉄板が白い鉄パイプに固定されているタイプのバス停の看板が現れたと思いきや、上側の丸い部分の代わりに同じ大きさの針が四本ある黒のシンプルな時計が備え付けられていた。

  17. 目線と同じくらいの高さの黒いガス灯が光を放ち続けながら壁の中へ消えていき、燃え上がる炎だけを残していった。大皿を被せて消さなければならなかった。

  18. 学習机があり、その傍らには既に倒れた状態の椅子があった。近づいてみると、この机の真下に一輪の白いチューリップが活けられた花瓶が置かれていた。

  19. 天井から垂れ下がる黒い電線を辿った先に、ダイヤル式の黒電話があった。部屋の半ば辺りからコール音を鳴り響かせ始め、そのまま壁へ吸い込まれていった。

  20. 平坦な室内であるにも拘らず、短い手すりがポツンと立っている状態で現れ、何も起こらないまま消えていった。

  21. 黒御影のプレートに、ステンレスのプレートに、赤御影のプレートにと、様々な材質のプレートが無造作に積み重ねられていて、それらすべてに「定礎」と掘り込まれていた。

出口

Level 771 N の中に暫く滞在していると、ただの物体のみならず、新たな壁や、新たな天井や、新たな床などが、部屋を取り囲む古い境界の中から現れるのを目撃することになる。

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壁の出現

当然、新たな壁が現れる中で滞在する危険度は、今までと比べ物にならない。普通の物体であれば横に歩いて避ければよいのだが、新しい壁そのものが動いているとなると、大きく回り込む必要があり、袋小路に閉じ込められる危険さえもある。

だが、これらの壁が現れると同時に、出口となる物体も様々な形態をとりながら出現するようになる。そのような物体は、往々にしてドアという形態を取ることが多い。これらには、透明なガラスが嵌め込まれていることもあり、その際にはユークリッド幾何学に反して異なる向こう側の風景が見えるようになっている。

この空間から出る際に行き着く先は、完全に列挙することが不可能であるほど、それぞれの報告において様々であり、前例のない出口が現れる可能性が常にある。参考になることを願い、実際にあった報告を、以下の通り書き並べることにする。

  1. ベージュ色の塗料が塗られた丸い窓が付いている鋼鉄のドアが現れた。その窓の先は 1980 年代の客船のラウンジであるように見えた。これを通ると Level 385 N に移動した。

  2. 金色の装飾があしらわれた重厚な黒檀の扉が現れた。その向こう側から読経の声が絶え間なく聞こえていた。これを通ると Level 840 N に移動した。

  3. 曇りガラスの窓がある木製の引き戸が現れた。かなり古びていて、ところどころ塗装が剥げていて、窓の向こう側は暗闇であった。これを通ると Level 25 N に移動した。

  4. 正方形状の床下収納の入口がカーペットの上を滑るように移動していた。それを開けてみると、正方形の輪郭が奥の方まで延々と続いており、その先は暗闇と化していた。壁に押し潰される直前であったので、やむを得ず身を滑り込ませると、延々と落下し続けたのち、 Level 61 N の上空 2 m に投げ出された。

  5. ルームランナーが壁の中から現れたので、その上に乗ってみると、急に猛スピードで動き出して投げ出された。視界が暗くなり、よく見えない中で、床にぶつかるはずだった。しかし、その瞬間に感じたのは、カーペットの柔らかい感触ではなくアスファルトの凹凸した感触であった。手をついて起き上がってみると、その周りは暗い市街地となっていて、そこは Level 34 N であった。

  6. カーペットの床を覆い尽くすかのようにアスファルトの地面が現れ、そこには駐車場のような路面標示が施されていた。大量のショッピングカートが壁の中から出てくるようになり、その中を掻き分けながら進んでいると、徐々に白い霞が出てきて、それが周囲が全く見えないほどの濃い霧に変わり、それでも進んでいたら、この霧が薄くなっていき、巨大な駐車場の中にいて、遠くに公営団地のような建物が見えた。いつの間にか Level 404 N に移動していた。

  7. 新しく現れた壁の一方から、青いプラスチック製のチューブスライダーが突き出ていた。突如、そこから大量のカラフルなボールプール用のプラスチックボールが流れ込んできて、それにより膝下までボールで埋まって床が見えなくなってしまった。必死に移動していたら、踏み出した右足が予想を超えてボールの中に沈み込んでいき、慌ててバランスを崩すと、全身もボールプールの中に沈み込んでいった。そのまま意識を失い、再び目覚めた時には、 Level 4 N のプレイルームに横たわっていた。

  8. 球布が欠如した熱気球のゴンドラが横倒しになったまま現れたので、物資を見つけるために、このゴンドラの中に入った。すると、急に浮遊感が襲い掛かってくるやいなや、ゴンドラが床を通り抜けて落下し始め、蛍光灯の光は遠く頭上へと消えていき、周囲は暗闇に包まれ、このまま永遠に落下するのかと思っていたら、バーナーの火が勝手に点き、いつの間にか頭上に現れた黄色い球布が、その熱により照らされて膨らんでいた。ゴンドラの姿勢が安定すると、まるで宇宙から降下しているかのように暗闇が青空に染められていき、その中を無数の熱気球が浮遊していた。そこは Level 605 N であった。

  9. 一方の壁の中から、空間をゆっくりと埋め尽くすかのようにベージュ色のラインが入った朱色塗りの鉄道車両が丸ごと現れ、軋み音を響かせながらカーペットの上を走り続け、その場に留まり続けていた。重厚な車両を呆然として見上げていると、こちら側の扉が大きな音を立てて開き、その中から冷たい空気が流れ落ちてきた。反対側の扉は閉じていて、その嵌め込みガラスの向こう側には、燦々と太陽に照らされた青空が果てしなく広がっていた。その青空は、まるで広々としたキャンバスであるかのような側面窓によって切り取られていて、その窓の下には使い込まれた緑色の座席と黄緑色の座席が並んでいた。わずかに角度がついた日差しが車両の内部に陰影を生み出していて、その車両が軋む度に吊革が揺れていた。

    いざなわれるかのように目の前の扉の縁に手を伸ばして段差を攀じ登り、車両の中で立ち上がると、窓越しで見下ろした先に、さざ波で満たされた青い海が水平線の彼方まで広がっていた。その光景に息を呑み、しばらく動けずにいると、突如、先ほどと同じような大きな音が車両を揺らし、慌てて振り向くと、閉じられていく扉の向こう側へ弱々しい蛍光灯の光が消えていった。その後に残されたのは、ただ青い海と青い空の狭間に広がる、無数の積乱雲だけであった。 Level 378 N のことを知ったのは、だいぶ後になってからである。

新たな壁や、新たな天井などが、既にある空間を塗り潰すかのように現れるようになっても、危険を顧みず滞在し続けることもできる。無謀なことであるが、これを行う者は後を絶たない。かれらが言うには、記憶の奥底にある僅かな既視感が希望であるようにも思えるということである。

空間の様相は、時が経つにつれて偏調していく。それは、ある特定の形を目指しているようにも見える。模様が不揃いな黄色い壁紙も、カビ臭いカーペットも、ノイズがひどい蛍光灯も、頻繁に現れるようになる。見知らぬ光景であるはずなのに、既視感を覚える。

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最も長く滞在した者が撮影したスナップショット

もしかしたら、あなたも見覚えがあると感じるかもしれない。

入口

Level 771 N に入り込むことは、いつも唐突であるように思えるが、何らかの予兆を伴うことが多い。参考のために、どのように入り込んでしまうのかを、以下の通り書き並べることにする。

  1. Level 35 N の、どこからともなく雨音が響き、随所で雨漏りが生じている廊下を探索していると、変哲のない十字路のうち一方が、いやに静かであることに気づいた。その方向へ進んでみると、直角に曲がりくねった廊下が延々と続いていて、雨音が徐々に遠ざかり、空気が生暖かくなっていくのを感じられた。とうとう廊下の突き当たりに行き着くと、その暗がりの奥にただ一つだけ非常口があって、その上の非常口誘導灯が点滅していた。恐る恐るドアへ近づこうと踏み出した其の足が、床のカーペットを突き抜け、そのまま Level 771 N へ移動した。

  2. Level 92 N の、弱々しい蛍光灯が並ぶ天井と無数の寝具から成る床の狭間を探索していると、ある一帯の蛍光灯が他の場所よりも高い頻度でちらついていた。それを気にせずに探索を進めていると、明らかに自分の物ではない着信音が、自分の足元に広がる無数の羽毛布団の重なりのどこかから鳴り響いた。それを探ろうと羽毛布団の隙間に肩まで手を突っ込み、ようやく大元の機器を掴んだ瞬間、まるで空洞に落ちるかのように落下し、そのまま Level 771 N へ移動した。

  3. 現実世界のオフィス街の中を移動していた。そこは、強烈な日差しと蒸し暑い空気と交差点を行き交う雑踏と車両の走行音で満たされていた。それを横目に歩いていると、突如それらすべてが静まり返った。思わず立ち止まり、辺りに視線を巡らすと、薄暗い路地裏が狭い間口を覗かせていた。ゴミや自転車などの本来あるべき生活感がまったくなく、時の流れから切り離されていて、ただ静かに古びていた。こちら側を気にせず行き交う人々の中で、喧噪の狭間に落ち込んでいて、現実性が消失していた。好奇心から路地裏の中に足を踏み入れると、アスファルトの地面の罅の中から僅かに緑色の光が漏れていて、それに気づいた瞬間、周囲の物体が、何重にもぶれて、滲むかのように溶けて、浮遊感と共に Level 771 N へ移動した。

あなたが注意を怠り、このような予兆を見落として、外れ落ちてしまったら、生暖かく息苦しい空気と無機質な蛍光灯の白色光で満たされ、常に変遷し続けながらも人類に寄り添うことは決してない奇妙な空間へと行き着くことになる。あなたに幸運があらんことを。

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