Level 77.3 N の遊歩道を撮影した写真。
Level 77.3 N とは、バックルームにおける 77.3 N 番目の階層であり、Level 77 N の副次階層である。
概要
Level 77.3 N は、アスファルトで舗装された川沿いの遊歩道とその路傍に植わっている桜や梅の街路樹が、分岐も湾曲もすることなくただひたすらに果てしなく続いている空間である。この階層は日本の春にどこか似た様相を呈しており、気温は15℃前後と肌寒く、空気は基本的に乾ききっている。ただし、場所によっては空気が突如として湿り気を帯びていき、局地的に湿度が変動することがあるためこれは常に一定とは限らない。加えて、時折冷たい夜風が木々の隙間を縫うようにして吹き抜けており、この階層の厳しい寒さを助長している。なお、この階層では喉が渇きやすいため、予め温かい飲み物を用意しておき、こまめに水分補給をするのが望ましい。また、この階層では食料はともかく充分な物資が手に入らないため、この階層に長期滞在するには物資の持ち込みが必須である。
Level 77.3 N の天上には雲一つない快晴の夜空が広がっているが、そこに月や星といった天体の姿は一つも見当たらず、また時間帯の変化も見られていない。ゆえに、空はただただ暗闇を映し出すばかりである。しかし、この階層には街灯や信号機1、遊歩道の向こうにぼんやりと浮かぶマンションの明かりといった光源がぽつぽつと存在しており、それらが放浪者の視界を確保してくれる。なお、こうした光源は微かに青く色づいている。
Level 77.3 N で度々見つかる青白い光を放つ照明は、そのどれもが点いては消え、点いては消え、とゆっくり点滅を繰り返している。路傍で咲き乱れている桜の花びらの純白はこうした青白い光に照らされて水色に染まっており、心なしか空間全体もぼんやりと青みがかっている。
Level 77.3 N に到達した者は多くの場合、遊歩道の地面にうつ伏せになった状態で目を覚ます。起き上がって顔を上げると真っ先に目に入るのは、道の向こうにぼんやりと浮かぶマンションの明かりである2。なおその際、路面に散乱した桜の花びらが頭や衣服に引っ付いてくるかもしれない。後述するが、桜の花びらは喫食可能な為早い段階で拾い集めておいて損はないだろう。
遊歩道
Level 77.3 N の遊歩道はアスファルト舗装がなされたまっすぐな一本道であり、路上に目立つ障害物は存在しないため、放浪者は迷わずその路上を散歩することができる。
遊歩道の両脇には植え込みのスペースが設けられており、それぞれ異なる種類の樹木・草花が植えられている。遊歩道と植え込みの間は木杭と鎖でできた簡易的な柵で隔てられているものの、これは跨ぐかくぐるなどして簡単に通り抜けられる。植え込みの樹木・草花について具体的に説明すると、マンションの明かりを正面に見据えた場合、左側には桜の木々が等間隔で植えられており、右側には低木のほかに枯れかけた梅の木々が飛び飛びに植えられている。また、右側の植え込みの奥には、遊歩道と並行して延びている道路を挟んで、一戸建ての家屋がところ狭しと立ち並んでいる。特筆すべきことに、この道路ではいかなる車両も一切走行しておらず、辺りは水を打ったように静まりかえっているのが常である。
先述したように、植え込みへの侵入は容易である。しかしながら、右側の植え込みへ侵入を試みた放浪者はほとんどの場合、ふいに発生する突風によって遊歩道の方へ押し戻されてしまう。これを経験した放浪者は皆一様に「立っていられないほど激しい水圧のようなものを前方から受けたようだった」と、身体や衣服は濡れなどしていないにも関わらず、後にそう証言している。ただ、運よく押し戻されずに済み、道路へ侵入できることがあるようで、そのまま住宅街を横目に道路を一直線に進み続けると、辺りの景観に混じる青色が段々とオレンジ味を帯びてゆき、最終的にLevel 180 N の車道上に到達する。なお、住宅の外壁に取り付けられた扉はいずれも施錠されており、内部への立ち入りは不可能であるとされる。
その一方で、左側の植え込みの奥にある下り坂に足を踏み入れた放浪者は、急勾配も相まって、その慎重さによらず突然足を滑らせて斜面に尻餅をついて勢いよく滑り落ち、坂の終点の地面に向かって外れ落ちる事となる。これを境に実行者との連絡が途絶えることから、実行者はおそらく失踪したものと思われる。そのため、決して下り坂に近付いてはならない。
Level 77.3 N の遊歩道の上を歩いていると、ふとせせらぐ水の響きがどこからか微かに聞こえてくる事がある。音のする方向へ目をやると、そこには無数の桜の木々が一定の間隔をおいて植わっていることに気づく。さらにその奥に目を凝らせば、月明かりを受けてきらきらと光る水面が見えてくるはずだ。せせらぎの正体とは、音を立てて流れる小川だったのだ。そして、どうやら遊歩道は土手の上に位置することに気づき、桜の木々は河岸から土手までに広がる平地、いわゆる河川敷に植えられているのだと理解する。
Level 77.3 N の遊歩道は、階層内を流れる河川の両岸に土砂を盛り固めて作られた堤防の上を、アスファルトで舗装してできたものである。そしてその盛土法面は河川に向かって下り坂になっており、これは前述したように失踪可能性を秘めているため非常に危険である。
桜
向かって左側に目を向けると、目の前には桜の太く立派な幹がそびえ立っている。そのまま目線を持ち上げていくと、木は途中途中で枝分かれを繰り返しながら放浪者の頭上まで手を伸ばしていることに気づく。遊歩道の中央に向かって垂れ下がっているか細い枝の先には、数え切れないほどの満開の桜がいっぱいに咲きこぼれている。
Level 77.3 N の桜。奥に後述の立て看板が見える。
Level 77.3 N の桜を近くで目にした放浪者は、それを持ち帰りたいという強い衝動に駆られる事が知られている。しかし、決して桜の枝を折ったり花びらを毟り取ったりしてはいけない。実行者の中に、それを手に持ったままLevel 520 N やLevel 9 N などの危険な階層に到達した者が続出している。これに関しては、もしそれが不本意な結果であった場合も同様であるとされている。
しかし理屈は不明だが、遊歩道の路面に散乱した花びらを拾って持ち帰った場合では階層移動は発生しない。なお、桜の花びらは喫食可能であり細かくちぎって口に入れると、ふんわりとした食感とともに、バニラにも似た甘く華やかな香りとほんのりとした苦みを味わえる。ただし、数枚食べた程度では大して腹も膨れない上、喫食に伴って喉の渇きがより一層ひどくなってしまうことが分かっているため、急を要さない限りは桜の花びらに手を出すべきではない。こうした桜の花びらは日持ちする上に階層外へ持ち出しても変わらず食料として使えるため、放浪者の間で重宝されているようである。
また、夜桜の美しさについ見惚れてしまったがために、そのまま柵を乗り越えて植え込みに侵入し、さらにその奥で足を踏み外して前述した下り坂に滑り落ちたことで失踪した放浪者も少数ながら存在するため、この階層では桜に近寄らないようになるべく遊歩道の中央を歩くことが推奨されている。
Level 77.3 N の桜。奥は急斜面になっており危険である。
備考
- 階層内の照明が放つ青白い光を全身に浴びた放浪者は、「波打ち際に寝そべり、引いては静かに打ち寄せる波の動きに翻弄されるような不思議な感覚を得た」と後に報告している3。その際に、潮風や波音さえ感じたと報告する者も過去に数例存在した。しかし、当ウィキ内ではその全てが一種の幻覚であると結論付けられている。なお、放浪者自身が階層外から持ち込んだ光源は同様の影響を及さない事から、これは階層固有の光源のみに限られた、限定的な現象であると思われる。
- Level 77.3 N の河川敷には、立て看板が設置されていることがある。書かれてある内容の多くは「バーベキュー・花火といった火を使用する行為の禁止」や「タバコやゴミのポイ捨ての禁止」、「草花の持ち帰りの禁止4」といった、ごく普通のありふれた注意書きであるが、唯一特筆すべき点として、隅っこの方に『並際公園』と小さく書かれた看板がこれまでに数多く発見されていることが挙げられる。一部の放浪者はこれを当階層の名称として使用しているようである。
- Level 77.3 N の小川を隔てた向こう岸に、ぼんぼりの明かりが一定の間隔を空けてぽつぽつと浮かんでいる様子が見えた旨の報告がここ数年相次いでいる。このことから、向こう岸には主階層が広がっている可能性も考えられるが、これはあくまで憶測の域を出ない。しかし、放浪者の中にこの階層を主階層に倣って『此岸』と呼称する者がいることもまた事実である。
イレギュラー報告
初の事例として、「雨上がりのような外観のLevel 77.3 N に到達した」という放浪者が現れた。報告によると、そのようなLevel 77.3 N では河川が氾濫危険水位に達するほどまでに増水しており、今にも遊歩道の方へ打ち寄せてきそうだったという。濡れた路面は滑りやすく、難儀であったがなんとか遊歩道の上を歩き続けてしばらく経った頃、いきなり川の水が溢れだし、足をとられてしまった放浪者はそのまま水中に引きずり込まれて気を失ってしまう。不意に感じた瞼を刺すような眩しさに思わず薄目を開けると、放浪者はいつの間にかLevel 314 N の居住区で青白い光を放つ照明に照らされていた。なお、水に浸かったにも関わらず脱出後の衣服の状態は何故か例のごとく濡れていなかったらしく、それどころかクリーニングしたてのような清潔さであったという。また不可解なことに、放浪者の身につけていた上着とズボンのポケットの中には、桜の花びらがいつの間にかパンパンに詰め込まれていた。
Level 77.3 N で目にすることの出来る光景。
入口と出口
階層への入り方
- Level 77 N で地面の水溜まりに"落ちる"ようにして外れ落ちると、意識が戻るころには既に Level 77.3 N の遊歩道の上でうつ伏せになって倒れている。
- Level 366 N のプラットフォームの壁に貼られたポスター広告のうち、花見スポットを案内する旨のものに触れると Level 77.3 N に到達する5。
- Level 474 N の防砂林の中で自生する松の木々に紛れて1本だけ不自然に生えている桜の木を見つけ出してそれに触れると、 Level 77.3 N に到達する。
- いかなる階層からでも、少し湿り気を帯びた薄い青色の桜の花びらを見つけてその付近にあるドアやハッチ等を開ければ、その先が直接 Level 77.3 N に通じているとされる。そこへ一歩足を踏み入れると、気づいた時には遊歩道の真ん中であお向けになって桜並木を眺めながら寝そべっている。
階層からの出方
- Level 77.3 N の遊歩道を進むなかで身体的または精神的疲労を覚えた途端、青く濃い霧がどこからともなく立ち込めてきて、霧が晴れてきた頃には知らぬ間に Level 36 N の青の区画へ到達している。
- Level 77.3 N で桜の枝を折ったり花びらを毟り取ったりすると Level 520 N や Level 9 N などの比較的危険な階層へ到達する。
- Level 77.3 N で右側の植え込みから道路へ侵入し、そのまま住宅街を横目に道路を一直線に進み続けると、辺りの景観に混じる青色が段々とオレンジ味を帯びてゆき、最終的に Level 180 N の車道上へ到達する。
- Level 77.3 N で突然に小川の水が溢れだし、水中に引きずり込まれて気を失うと、目覚めた時には Level 314 N の居住区で青白い光を放つ照明に照らされている。しかし、再現性は非常に低いとされる。
- Level 77.3 N で土手の斜面を滑り落ち、下り坂の終点の地面に向かって外れ落ちるとそのまま失踪すると考えられている。

