Level 673 N
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危険度: 4
空間信頼性: 不安定
実体信頼性: 混雑
情報提供待ち

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Level 673 N の部屋々々の境界線が最も写った写真。

Level 673 N とは、バックルーム における 673 N 番目の階層である。

概要

Level 673 N は様々な部屋々々が乱雑なパッチワークの様に接続された階層である。これらの部屋は現在確認されているだけでも数十種類が存在しており、それぞれの部屋が異なる空間の様相を持つ。この階層を構成している空間が無限に存在しているとする仮説も立てられているが、これに関する詳細な検証や調査は、ウィキ管理者や利用者が個人で探れる範囲ではなく難航している。

Level 673 N を構成する部屋全てに共通している特徴が存在する。第一に、これらの部屋の気温は必ず摂氏20度前後、湿度が50%前後であり放浪者にとってある程度快適な環境である。これは常に薄い霧が漂っている様な、見るからに環境の異なる空間でも該当する。第二に、この階層は空間自体も非常に不安定であると判断されているのだが、外れ落ちを用いて他の階層へ移動することは現段階では不可能である事が判明している。理由は不明なのだが、現状までに空間の変動に巻き込まれたという報告が一切存在しない他、意図的な外れ落ちの一切が不可能であった旨が報告されている。これに関し、一部の放浪者からはこの階層が非常に安定した非ユークリッドで接続されている事が原因であるという説が唱えられている。

Level 673 N では多くの Wi-Fi が確認されており、その殆どがパスワードを必要としない。ただそれぞれが特定の部屋を発信源としている上に電波も強くなく、探索にあたって電波が届かなくなる自体は頻発するだろう。また、この階層で Wi-Fi に接続した際、端末に見覚えの無いzipファイルがダウンロードされ始めたという報告が多数なされている。これを解凍した放浪者からは端末に大量のポップアップが生成されるなどの挙動が報告されており、ウィルスファイルが含まれていると考えられる。その為、何らかのファイルがダウンロードされた事に気づいたなら、速やかに端末から削除するべきだ。尚、現在までにzip形式以外のファイルがダウンロードされたという報告は一切存在しない。




ロビー

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ロビー で撮影された写真。

Level 673 N に到達した放浪者は、必ず薄いベージュ色の壁と定期的に設置された柱で構成された空間に辿り着く。この空間は階層内で最初に辿り着く場所であるので、以降は便宜的に ロビー と呼称する。この部屋は比較的安定しており、多くの部屋と接続されている。また、電気・ガスが通っているようで、食料の備蓄さえあればこの階層を探索するにあたっての拠点として利用できるだろう。

Level 673 Nロビー は扉や階段などといった形で、多くの部屋と接続されている。現状この部屋から直接階層外へ脱出出来たという報告も無い上に、有用な物資や生存に必要な食料・飲料水は外部から持ち込まれたものを除き存在しないため、準備ができ次第他の部屋の探索をすべきだろう。




部屋々々

Level 673 N の部屋の形状は多岐に渡り、こじんまりとした部屋などのよくあるような構造ばかりでなく、体育館程の大きさの部屋まで発見されている。その多くは扉を介して隔てられているが、記事冒頭の画像の様にいきなり壁紙やカーペットの色が変わっている場合も見受けられるだろう。

Level 673 N は部屋毎に大きく性質が変わる為、部屋を移動する際は他の階層へと移動する様な心構えで行うべきだ。また、現在までの報告において、部屋を跨いで何らかの影響がある部屋が存在しない事が判明している。その為、部屋の移動をする際は一度部屋の外から内部をよく観察する事を強く推奨する。

Level 673 N の部屋々々の内、発見頻度が高く特筆性のあるものについて以下に記載していく。また、ここに記載されていない部屋の内、外から見た際に他の部屋と変わったものが見られなければその部屋では特に何も起こらない。もし部屋の中に何かが発見できた場合は、その部屋を通るのは推奨されない。

  • 白色の壁に床が緑と黄色のタイルで構成された部屋。高確率で煌びやかな素材が装飾された陶器やブリキ製の置物が見つかるが、特に有益な物品は存在しない。現在までに1件のみ、陶器や置物で部屋全体が埋め尽くされて侵入すらままならない状態で発見されたという報告がある。
  • 機械室の様な部屋。階段の先にある事が多いが、離れていても換気扇の回る音が聞こえるので発見は容易だろう。懐中電灯やType-Cの充電器など、有用な物品が多く発見されているので発見できたならば幸運だろう。稀に壁にひときわ目立つ真っ赤なバルブが取り付けられている事もあるが、回しても何も起こらない。
  • ざらついた小さなノイズ音を絶えず垂れ流す防災無線のスピーカーが配置されている部屋。壁や床は朽ちかけた小屋の中の様であり、概ねの場合電気が消えていて視認性が悪い。壁沿いの机にラップに覆われた人ひとり分のサラダ、味噌汁、炊けた白米等の食品が置かれており、風味から多少放置されたものと思われるが摂食しても健康上の問題は無い事が判明している。また、青空の模様をした水筒が見つかる事もあるが、全ての報告において中身は空であった。
  • 赤と黄色のストライプの壁で構成された部屋の中央に衣服をまとい、ポーズのついたマネキンが佇む部屋。中央のマネキンは部屋によってポーズが異なることが知られている。放浪者が部屋に入室すると同時に、マネキンが動作を始め接近してくる。非常に不安定な動きで接近してくる為に不安がって逃げ出す放浪者も多いが、放浪者の目の前まで辿り着くと動作を止める為危険性は無いものと見なされている。
  • 臙脂色の壁紙が貼られた部屋。部屋に散らばった生ごみの腐敗臭がすさまじく、不快害虫が壁一面を這っている事が判明しているが、その性質上内部についての報告が不足している。立ち入るべきでは無いだろう。
  • 蒸気船をモチーフにしていると思われるオブジェを中央に壁の中に泳ぐカクレクマノミやツノダシなどの熱帯魚が描かれた部屋。他の部屋に比べて床の位置が低く、無色透明の水を湛えている。この水は磯の香りや風味から海水であると考えられるので、飲用するべきでは無い。また、オブジェには名前が刻まれていると思われる傷が至る箇所に付いているが、現在まで解読は出来ていない。
  • 完全に閉じられた柵状のシャッターで隔離された、絵本や多くの種類のおもちゃで溢れたプレイルームの様な部屋。壁には簡素な商品棚が連なっていて、児童向け番組と思われるDVDが陳列されているのが見える。中央の軟質ビニィルが被せられた机の上には大きな丸皿を完全に占領する程の大きさの七面鳥の丸焼きと典型的なスクエアケーキが存在しているが、内部に侵入出来ない以上無用の長物だろう。




荒廃した部屋

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荒廃した部屋 を写した写真。

Level 673 N では稀に 荒廃した部屋 が見つかる事がある。この部屋は他の部屋に比べ明らかに広く、腐りきった壁材や床に散乱するじゃりじゃりとした小石とガラス片などで容易に判別が可能だろう。この部屋は一見危険に見えるかもしれないが、実際は比較的安全かつ行き帰りが簡単な部類であり、発見したのならば探索をするべきだろう。

Level 673 N荒廃した部屋 の床は先述した様に、小石やガラス片が散乱している。その為、靴を所持していないのならば、怪我をしない様に移動する際は足元を注意するべきだ。床には様々な物品が散乱しているが、その全てが破損しており正規の用途では使用できないだろう。また、これらの物品は全て食用可能であり、ミントとマスカットをブレンドしたような味がする。

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荒廃した部屋 のトイレ。

Level 673 N荒廃した部屋 にはトイレがお誂え向きに設置されている事がある。今までに発見された全ての例でトイレットペーパーの残りがほとんど無かったり固形石鹸が欠片しか無いことが多いが、備え付けの蛇口はこの階層唯一の安定した水源として使用できるだろう。詳しくは後述するが、この階層からの安定した脱出手段としても使用できる為、荒廃した部屋 に辿り着いたならトイレを探す事を推奨する。




実体

Level 673 N では稀にだが様々な実体を見つける事が出来るだろう。その多くは放浪者を気に介さずに動くだけだが、いくつかの実体は放浪者に敵対的な行動を取る為注意が必要だろう。これらの実体は部屋を移動する事が出来る為、敵対的な実体と遭遇した場合は通る部屋を確認しながら逃げるべきだ。

Level 673 N で発見出来る物品の内、今までに報告されたものを以下に列挙する。

  • 衣類や装身具だけが浮遊している実体。放浪者に覆い被さってくる場合がある。
  • 水に濡れたトイレットペーパーが寄り集まったかの様な実体。放浪者を見かけると足にまとわりついてくる。
  • 大量の水で満たされた宇宙服。まるで中に人がいるように泳ぎながら階層内を移動している。
  • ロボット掃除機。放浪者を見かけると足元に体当たりを始める。
  • 宙に浮く風鈴の姿をした実体。この実体が鳴らす音を聴くと、その度に僅かずつ体感温度が低下していく。
  • 鯉のぼり。摂食可能。
  • 大量の生きたテントウムシの群れ。




物品

Level 673 N の全ての部屋で共通して発見できる物品が何種類か存在している。これらの物品は特段有用な訳では無いものが多いが、貴重な食料・飲料となる物もあるので見掛けたならば回収する事を推奨する。

Level 673 N で発見出来る物品の内、発見頻度の高いものを以下に列挙する。

  • 単三乾電池
  • 堅パン
  • にぼし
  • ビーフジャーキー
  • 袋詰めされたバナナ
  • 干からびたニンジン
  • 少し濁った水の入った1Lペットボトル
  • 非常に疲労したドブネズミ
  • 欠けた歯のインプラント
  • 完全な状態の爪
  • カッターナイフ
  • こけし
  • 小さな御守り
  • アーモンドウォーター
  • 不明な赤色の腐食性液体




入口と出口

階層への入り方

  • バックルーム のいかなる階層でも、扉の先が Level 673 Nロビー に接続されている場合がある。



階層からの出方

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荒廃した部屋 のトイレで発見された階層からの出口。

  • Level 673 N において何らかの階層と類似した部屋を見つけた場合、その部屋の扉の1つが該当する階層に接続されている場合が多い。
  • Level 673 N荒廃した部屋 に備え付けられたトイレの内、扉の向こうに何も存在していないものが1つだけある。この空間の中に入り一度扉を閉め、再度扉を開くと Level 343 N に到達する。
  • Level 673 N を探索している際に突如として外れ落ち、 Level 771 N に到達したという例が過去に1件のみ報告されている。











補遺#19 森の部屋について

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森の部屋 を撮影した唯一の写真。
窓の外もまた、森が描かれているだけだった。

森の部屋 はこの階層において最も危険であると推測される部屋である。この部屋は必ず扉によって隔てられており、秋頃の森が描かれた壁紙と緑色のカーペットによって構成されているため判別は容易だろう。後述するその性質により、侵入しようとする試みはやめた方が良いと言える。

森の部屋 に入った放浪者は、使われていない部屋特有の埃の匂いに気づく。そして今までとは違う、明確に"気配を感じない"と形容される様な感覚に陥る。放浪者各位には バックルーム に初めて到達した際の感覚を思い出してもらうのが早いだろう。嫌な緊張感の中で部屋の奥に向かって歩を進めたのなら、背後で何かが軋む音が聞こえる事になる。咄嗟に振り返ると、入ってきた扉が閉まるのが見える。あなたは急いで扉を開こうとするかもしれないが、まるで鍵が掛かったかのように動かない。

扉を開けるのを諦めて先を見ると、先程まで無かったはずの、或いは見逃していた扉が目に入る。部屋を移動すれば、この不気味な場所から逃げれるかもしれない。それに背後の道は閉ざされてしまったので、他に行く先も無いのだから。そうして仕方なくあなたは扉を開くが、今まで訪れてきた部屋々々とは違いそこもまた、森が描かれた部屋だった。

その部屋も薄く積もった埃の匂いだけがして、他には何も無かった。周りを見ても正面の扉と森の絵だけが拡がっている。そこでは自分以外の動きも、音も、気配も感じない。聞こえるのはただ自分の足音と少し早くなった鼓動だけ。冷汗の不快感を感じながらも、奥へと歩を進める。背後でまた扉が閉まり、あなたはまたゆっくりと扉を開く。

そこもまた森だった。歩を進める。扉が閉まり、扉を開く。また森が目に映る。あなたは焦りを感じ、また扉を、扉を、扉を開く。どこまで行っても森が続く。進めども進めども森が続く。もうこのまま出られないのでは無いか、そんな考えが脳裏を過ぎり、あなたの足は重くなる。もう駄目なのではないかと。でも、まだ大丈夫。大丈夫だから、前に進もう。

扉を開く。前に進む。扉を開く。前に進む。少しずつ、ほんの少しずつ景色が変わる。気にしなければ本当に微々たる差かもしれないけど、それでも少しずつは変わっている。あなたはそれに気づいていないかもしれないけど、それでも扉を開く。本当に大丈夫? とあなたが聞く。大丈夫だよ、確信は無いけどさ。ただ、そう信じてるから。そうして、また進むんだ。

扉を開く。少し、木の数が減って光が差し込む。ほら、着いてきて。もうすぐ、もうすぐきっと着く。あなたは俯いたまま、後ろを着いてくる。前を向き、進み続ける。きっと、この道で合っている。少しずつ部屋も沈み始め、それに足が取られる。それでも前に進む。あなたの足が止まる。僕はあなたの腕を掴み、連れていく。こんな所で止まっちゃいけない。

雨が降る。ここは部屋の中だったかもしれないが、もうそんなのは関係ない。あの日のように服が濡れて重くなる。それが汗か雨かは分からないけど。それでも、足を進める。全能感なんて持ってないけど、これしか出来ないから。力の抜けたあなたの腕を掴んで、ただ、進み続ける。大丈夫、辿り着くから、きっと大丈夫。その言葉は多分あなたに向けられたものじゃなくて、自分に言い聞かせ続ける様に。

扉を開く。先に進む。木々が減る。雨が強くなる。部屋が沈む。その繰り返し。徐々に床に水が溜まって、気づけば腰まで浸水していた。足が重い。重い。それでもなお、進む。進む。進む。あなたの腕を離さないように。そうして、いくつもの部屋を越えて。ドアノブに手に手を掛ける。重い体を動かしながら扉を開くと

目の前には青い星が広がっていた。

ついに、ついに辿り着いたと、項垂れたあなたに目をやる。あなたは顔を上げ、どうしてと聞く。だって、あなたが僕にそうしてくれたから。だから、僕もあなたにそうしようと思ったのです。

あなたは森から来た。

私たちは地球へと戻らなくてはならない。こんな世界から抜け出すために。あなたはここでいかなければなりません。

それが良いのか悪いのかは、わかりません。そもそも考え方が間違っていたのではないかとすら思う訳です。

恐怖心などすっかり忘れて、あなたは楽しさを覚えながらゆりかごから飛び出して、白い煌びやかな翼があなたの中身も、皮も、存在も、真っ白に染め上げる。

僕もあなたの手を引いて、あなたはそれを手に取って、より奥へ、深みへ、暗がりへ、それに流されるように、吸い寄せられるように、欲望のままにどこまでも続く。

暫し休息として目を閉じましょう。きょうは、ゆっくりおやすみなさい。

おきたら、またいっしょに。




2019年の夏である。




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