Level 57 N の展示部屋。
放浪者が最初に辿り着く空間。
Level 57 N とは、バックルームにおける 57 N 番目の階層である。
概要
Level 57 N は、可愛らしい家具やインテリアで飾られ白を基調として彩られた部屋が、どこまでも広がるような階層である。展示部屋に飾られているドールハウスからは展示部屋とは異なる別個の空間に到達可能であり、ドールハウスへの侵入が階層からの出口として機能している。後述するドールハウスに侵入すれば他階層に到達するまで脱出不能な状況に陥るものの、ドールハウス自体が衣食住の揃った空間であり展示部屋に長居する意味は薄いだろう。
展示部屋に展示されている大量のドールハウス。
放浪者が最初に辿り着く空間である展示部屋にはガラス机やソファ、キャビネットやトルソーなどの様々な家具があり、それらの家具の種類や配置は部屋部屋を繋ぐ白い扉を通り抜けた先でも変化しない。その一方でガラス机の上やガラス張りのキャビネットに飾られたドールハウスのデザインや配置は部屋ごとに完全に異なる。
室温20度前後で暖かく、暖かな春の昼下がりのような雰囲気が漂う。天井に取り付けられたシャンデリアが室内を優しく照らし、窓の白いパーテーション越しに柔らかい陽光が差し込んでいる。窓からは植木鉢とオーナメントの並ぶ庭が見え、その青々と茂る芝生には薔薇やヒヤシンスなどの色とりどりの花が咲き誇る。窓から外に出ようとすると、外れ落ちてまた部屋に戻ってしまうので脱出はできないようである。展示部屋の扉の数は部屋によってまちまちではあるが、それらの扉は総じて相似な部屋に繋がっている。稀にオルゴールの優しい音色が聴こえたり、焼き菓子を思わせる甘い香りが微かに漂ったりすることもあるようだが発生源は不明である。
ドールハウス
ドールハウス内部。
実物大のドールハウスのようにみえる。
ドールハウスの入口の方を向いて前に進めば、途端に自分自身が浮き出すような感覚とともに周囲の光景がどんどん拡大されていく。一般的な家屋と同じぐらいの大きさだった豪華な窓や机、そういった階層内の構造物すべてが目の前で一様に膨張していき、最終的には見上げるほどに大きくそびえ立つ。そのため、放浪者は、あたかもドールハウスに棲む人形になったかのような感覚を覚える。放浪者は可愛らしい家具やインテリアで飾られ白を基調としたどこまでも広がるドールハウス同士が、マトリョーシカ状に連結されている中を渡り歩いて脱出する必要がある。
そのドールハウスの玄関まで辿り着き、両開きのドアを開ければ、そこには先ほどまでと同じく白とパステルカラーを基調とした可愛らしい部屋部屋が広がっている。これらの家具は明らかに単なるドールハウスのミニチュアであるにも関わらず、そのどれもが正常に機能する。例えば電源コードの繋がっていないランプシェードは紐を引っ張れば照明が灯り、とても配管されているとは思えない洗面台でさえ蛇口を捻れば水道水が流れて排水されていく。
自分自身が人形としてドールハウスにいるような状況であるにも関わらず、不思議と圧迫感や狭苦しさを感じることはない。白やピンクで彩られた部屋は美麗であるが過度に豪奢で目がちらつくほどではなく、一部の放浪者は実家で寛いでいるような安心感と形容している。どの部屋も柔らかな午後の陽気で充たされており、開いた窓から時折流れ込む爽やかなそよ風にはほんのりと薔薇の芳香が混じる。
屋内部分は十数部屋を構える比較的大型のものでまるで立派な洋館のような様相を呈している。食料が確保可能で居住も容易な環境である。後述する実体群が必ずそこで暮らしているものの、放浪者がそこで暮らすことを妨げはしない。また、クローゼットやキャビネットの中にはバックルームでは入手しにくい部類の衣類 リボンやフリルで飾られた可愛らしさや柔らかさを重視するパステルカラーの服が、ハンガーで吊り下げられてたり、綺麗に畳まれて収納されたり、トルソーが纏っていたりする。特にコルセットと豪華絢爛なドレス、刺繍された下着類は他階層での発見例が少ないので身に着けたい放浪者は確保すると良いだろう。
屋外には前述の展示部屋から伺えたような広大な庭園がどこまでも広がっている。空は太陽や雲の存在が欠落した柔らかく明るい白一色の空虚で出来ており、本物の空ではない人工的な様相を呈している。白空の下には草花の絨毯が無限に敷き詰められているだけであり、地平線まで歩いてもめぼしい建造物は一切存在しない。この場所では展示部屋に戻ることは不可能であり、脱出するには屋敷の中に戻って後述する別の"ドールハウス"を探す必要がある。
人形
放浪者に微笑みかける主人の人形。
ドールハウスの中には女性的風貌の人型実体群が在住している。容姿がドール1に類似していることから、放浪者の間では"人形"や"ドール"などと呼ばれている。肘や膝などの関節部が球体関節様になっている点や、身体が軟質ビニールで構成されているなどの人形らしい特徴を有している。体躯は華奢かつ若い女性のようであり、多くの場合においてワンピースやロリィタファッションと類似した衣類を着用している。
2種類の実体が存在しているようであり、放浪者から"主人"と"メイド"で呼び分けられている。主人は偶に部屋間を移動しながら読書、刺繍、庭の散歩、"お菓子"の飲食などに興じており、メイドは主人の世話やどこからともなく用意した"お菓子"の配膳に従事している。主人とメイドに関しては主人が1体なのに対してメイドは複数体存在し、必ずクラシカルなメイド服を着用している点から判別は容易だろう。
人形は中立的に振舞う。放浪者と遭遇した場合、放浪者に対して微笑みかける・飲食物を提供する・会話を行うなどの行動を取る。声は若干ハスキーだが、優しさを感じるものであるという報告が寄せられている。こちらから手を振る、話しかける、ハグなどをすると、それらに対応する行動を示す。
例外的にこちらが後述する"ドールハウス"を持ち上げる・動かそうと試みると、どこからともなく現れた主人の人形がこちらの手を払いのけて制止し、無言でこちら側をじっと凝視してくる。無論これらで放浪者が危害を被る訳ではないが、いくら実体相手と言えども無礼な振る舞いは慎むべきだろう。
お菓子
よくみられるケーキ。
ポットの中身は紅茶であった。
人形との交流の最中にメイドから飲食物を手渡されたり、部屋の棚に飾られていることがある食料。基本的にケーキなどの洋菓子である。例を挙げるとフルーツタルト、ショートケーキ、シュークリーム、パウンドケーキ、マカロン、チョコチップクッキーなど。温かい紅茶や珈琲などの飲料と共に提供/発見されることもある。飲食物は放浪者の間では"お菓子"と呼称されている。"お菓子"はガラス/磁器製の容器に収められた/載せられた状態で提供/発見されることが大抵であり、それらの外見はミニチュア雑貨のようなものである。また、"お菓子"の質感が樹脂粘土に類似している場合が多いが摂食に際する問題はない。
"お菓子"の食感は菓子の種類を問わずやや硬いが、味や匂いはなんら遜色なく美味である。"お菓子"を大量に回収した場合でも付近のメイドから白い目を向けられるだけで主人から怒られる訳でもないので、食料源だけではなく嗜好品としての回収も推奨する。
最奥のドールハウス
屋敷の中を1部屋1部屋しらみつぶしに探し回っていると、自分が最初に侵入したドールハウスとは別の"ドールハウス"がどこかに必ず1つ飾ってあるところを見つけられる。その"ドールハウス"に向かって入った時のようにドールハウスの入口の方を向いて前に進めば別の"ドールハウス"の玄関前に行き着く。新しい"ドールハウス"は家具やインテリアこそ異なるが、その他の要素は同じである。ただ一つ"ドールハウス"を跨ぐごとに屋敷から部屋と"メイド"が1つずつ減っていることを除けば。
放浪者が"ドールハウス"を渡り歩く中で十数部屋もあった広々とした屋敷の規模は段々と縮小していく。同様に十数体のメイドによる日々の賑わいも段々と寂れていく。そのような変化の中でも屋敷ごとに異なる主人は放浪者を久しぶりの客人として暖かく出迎え、もてなしてくれる。
十数軒の家屋を踏破した時、屋敷は単なる一軒家となっており主人すらいない無人の静寂の中で久々の孤独を思い知る。部屋の中央には机と椅子だけが鎮座しており、テーブルの上には恐らく自分のために主人が淹れてくれたであろう温かいままの紅茶入りティーカップに置き手紙が添えられている。
以下はとある放浪者が提供した手紙の写しである。
拝啓
わたぼこりの雨が止み、ほのかに空調のぬくもりを感じる季節になりました。
幾千万にも分岐するこの屋敷のなかから、私が家を見つけてお越しくださり、誠に嬉しかったです。
軟質ビニィルごしのぬくもりが伝えられないことが口惜しいですが、このお茶のぬくもりが代わりに暖めてくれることを願っています。
この屋敷はあなたがいない時も白熱電球で照らされているのでどうか患わないで欲しいです。
これからあなたに出会うこともまた稀になってしまうかと思いますが、またの機会に、お茶でもできたらと思います。
ささやかながらのおもてなしにて恐縮いたしますが、あなたはここでいかなければなりません。
敬意を込めて
- 私
放浪者が手紙を読み終えて、紅茶を飲み干すと一軒家の周りは無際限の庭園から左右を団地棟に挟まれたヒナギクが咲き茂る草原に変化している。今までの感謝を胸に扉を開けて、外に一歩踏み出し草原を歩み始める。
あなたはもう Level 57 N から脱出している。
入口と出口
階層への入り方
- Level 91 N で通常のシンプルな部屋のレイアウトから逸脱したブーケやシャンデリアで彩られた美麗な部屋に入ると、既にそこは Level 57 N の展示部屋である。
- Level 343 N の玩具売り場に人間が入れるほどの大きさの巨大なドールハウスが設置されている場合がある。そのドールハウスの扉を開けて内部に侵入すると、Level 57 N の展示部屋の扉に背を向けて立っている。
- Level 574 N の畳張りの和室できらびやかな食器に盛られた三段のアフタヌーンティーセットが聳え立っていることがあり、それを摂食すると Level 57 N の展示部屋にある椅子に座っている。
階層からの出方
- Level 57 N で"ドールハウス"を十数軒渡り歩いて辿り着く最後の一軒家で、手紙を読んで紅茶を飲み干し外に出ると、 Level 504 N の草花の上を歩いている。

