クレジット
タイトル: Level 400 N - "家出"
著者: Hori ta
作成年: 2024
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実体の呼び掛けに応じず、今すぐ物陰に隠れてください
もしあなたが Level 400 N でこの記事を読んでいるのならば、
焦らず実体に見つからないように移動し、遊具などを利用して身を潜めてください。
実体の死角に入った状態で落ち着いて記事を読み、早急に階層からの脱出を試みてください。
放浪者も実体も去った、無人のLevel 400 N 内の園舎及びグラウンドを写した写真。
Level 400 N とは、バックルームにおける 400 N 番目の階層である。
特筆事項
Level 400 N ではなぜか他の放浪者と出会うことがなく、またこれまでに未成年及び年配の放浪者がこの階層に到達したという報告は確認されていない。
概要
Level 400 N は、日本の保育所に類似した閉鎖空間である。なお階層内の屋内園舎における、グラウンドに面したガラス扉や正面玄関の自動ドアなどのあらゆる出入口は例外なく施錠されており、過去に放浪者が施設内に侵入した事例は後述する実体が関与したものを除いて報告されていない。そのため実質的に放浪者が探索できる範囲は階層内に併設された屋外園庭のみとなる。
このような事情により、園舎内部に関する情報は非常に乏しくかつ必要性が低いためある程度省き、本記事には園庭についての情報が中心となって掲載されていることに留意すべし。
Level 400 N 内部の気温は常に20℃ 前後を維持しており、時間帯は夕方に固定されている。階層内に設置されている時計は全て6時47分を示しており、これらも同様に固定されている。加えて太陽以外のあらゆる光源は消灯しており階層内は目の前にある自分の手の輪郭が認識しづらいほどに薄暗い。そのため、光源の役割を果たすものを階層内に持ち込んで探索する事を薦める。ただ使用時は後述の実体に光を見られないよう、注意を払わねばならない。
Level 400 N の園庭内では人型実体が徘徊しており、この実体は放浪者を探しているようである。もし気付かれてしまえば階層内で実体と二人きり、追いかけ回される羽目になる。実体と接触した放浪者はその後例外なく失踪している。どんな行動であっても、する際は実体に見つからないよう必ず注意を払う事を強く勧める。
Level 400 N の周囲には灰色のブロック塀の上に乗った白いメッシュフェンス、保育所における正面玄関と裏口にそれぞれ錆びついた埋め込みブレード門扉が設置されている。しかし、いずれも幼児の背丈程の高さしか無い。
Level 400 N の周囲には膜が張っており、夕暮れの景色はそれに投影されたものかのように見える。しかし、景色は非常に立体的であるため放浪者は膜の存在に気付きにくい顕著な傾向にある。
この膜を破った先には後述の外界がはるか彼方まで広がっており、フェンスから身を乗り出すなどして階層の外へ出ると、おそらく他のランダムな階層に到達する。これは外界、すなわち暗闇に向かって落下することを意味するが、この方法を試した直後に失踪した放浪者は確認されていないため、奈落へ落ちるわけではないと推測される。
Level 400 N 内部では不明な発生源から不定期に「遠き山に日は落ちて」のメロディが少しくぐもった音で流れており、これを聞いた放浪者は皆、今すぐ帰宅しないといけない、という焦燥感を覚えたと証言している。
Level 400 N 内部で放浪者にとって有用な物資が発見されたという報告は本記事執筆時点まで1件もない。また、他の階層から持ち込むという方法もあるが、後述する実体の存在からこの階層での長期滞在は推奨されない。
(屋外)園庭
Level 400 N の園庭には整備されたグラウンドの上に複数の遊具や鉄棒、屋根付きの砂場、木造の簡易小屋などが設置されており、これは実体から隠れる際に非常に有用である。
また、園舎の外の壁面には下駄箱が固定して設置されている。その中身には、つま先を前にして入れられた靴もあればかかとを前にしたものもあり、中には箱から半分飛び出たものもあったりとかなり乱雑に靴が収納されている。その大半はサイズが小さく、到達した放浪者が扱えたものではないが、稀に大人が履くようなひときわ大きい革靴等が見つかることがある。
園舎側のグラウンドの端には水飲み場が複数備え付けられており、蛇口をひねればそこから水分補給が可能である。ただ他の障害物から孤立しているためたどり着くまでに実体に目立ちやすく危険である。
(屋内)園舎
外側から得られる園舎に関する情報の一部を、僅かながら以下に掲載させていただく。
グラウンドに面する部屋は全て子供部屋のようで、それぞれ「〇〇組」というように6つに分けられている。それぞれの名称はグラウンド側から見て左から順に、
- ちきゅう組
- つき組
- かせい組
- もくせい組
- ほし組
- めいおう組
だと思われる。グラウンドに面したガラス扉には各組の子どもの作品と思われるものが張り出されている。
中でも、「ちきゅう組」のガラス扉に向かって外れ落ちると現実世界に帰還できるとする噂が放浪者間で存在するが、真偽は不明である。
現象
Level 400 N では全体の空間自体は安定しているものの、放浪者が転倒または高所から落下などして地面や遊具などの物体、あるいは地面に衝突しそうになった際に、その物体あるいは地面が俗に言うスライムのように柔らかい性質に一時的に変化したり、瞬間的に生暖かい突風が吹き放浪者の体が一定の方向に押され続けたことで回避できたとの報告が複数なされている。ただ、後述の実体から逃げる際にこれらの現象が作用した旨の報告は無い。
外界
Level 400 N を囲うように外に広がる、暗闇に包まれた、現実世界のものと思しき様々な存在が宙に固定されている異様な空間。ただ完全な暗闇ではなく、暗いのは背景だけであり、例えるとプラネタリウムのドームスクリーンを暗くし、スクリーンの手前に物体を設置した状態の暗さに近い。そのため、目を凝らせば目の前の非現実な光景に気付くことができるだろう。
見られる物体の主な例を挙げると、業務用の机と椅子のセットや信号機、横断歩道の白線部分の塗料などがある。業務用の机と椅子は基本単体では確認されず、空一面をうめつくすように複数体が連結された状態で綺麗に並べられている。水平面で等間隔に固めて積み上げられているその様子は、まるで高層オフィスビルの内装そのものである。
外界はLevel 400 N とは完全に膜で隔てられており、放浪者は膜に触れるまで膜とその存在に気が付かない。この膜は非常に薄く、指などで簡単に突き破ることが出来るが指を引っこめるとすぐに穴が閉じてしまう。性質としては放浪者曰く、手につかないが水面に似ているらしい。
境目は階層の囲いに沿って鉛直上向きに果てしなくのびており、階層と外界間を隔てる膜に顔を突っ込んで見てみると景色の分け目は絵の具で塗り分けたようにくっきりと浮かび上がっているようである。
また、外界内には物体とは別に人型の存在がおびただしい量確認されている。それらは支えもなく宙に留まることが出来るようで、多くの場合、これらはない地面に対して水平方向に高速移動している。これは、動画を早送りしたよう、とも形容される非常に目まぐるしい速度である。いずれもスーツのようなものを身にまとっており、よく見えないが、実体の外見には幅広い個体差が見受けられ、一部の放浪者は、冷ややかな表情をしていたと証言している。
高速移動中、存在同士が平行な軌道でですれ違ったと思えば一定時間その場に留まりまたそれを繰り返す様子は、横断歩道や道路での移動を彷彿とさせる。
稀に空中で業務用の椅子に座ったり階段を上り下りするような行動を取るが、これらに代表される僅かな仕草さえも辛うじて目で捉えられる程度の速さである。
外界を覗いた放浪者は、これらの存在から現実世界における都市部を連想し、まるでそこから壁、天井、床などのあらゆる仕切りを排除したかのようだ、との印象を受けた旨の証言を複数残している。
また浮いているのは自分だと感じ、以後自室に閉じこもりやすくなる傾向にある。また、稀な事例として対人恐怖症を患うこともある。
これらの物体および人型存在に接触した放浪者は記録上存在しないため、これらに実体があるのかどうかは今のところ分かっていない。
実体
"先生"
心配そうな表情で園庭内を歩き回っている実体。ポケットを有したデザインのエプロンを首からかけた、成人男性もしくは女性のような外見をしており、常に放浪者を探しているような素振りを見せる。放浪者に対して日本語の呼び掛けを行う場合があるが、実体とはいかなるコミュニケーションも取ることが出来ない。また、この呼び掛けは放浪者の危機感を低下させる特性を有していると思われる。
この実体は放浪者を見つけると競歩程度の速さで接近し、放浪者を叱るか抱き抱える。その後は放浪者の手を引っ張り、園舎に向かって見かけによらぬ力で放浪者の体を引きずりながら連れていく。
このとき施錠されていたはずのガラス扉はなぜか鍵が開いており、実体に連れられて放浪者はそこから中に進入する。上記の流れに対しての抵抗はほぼ無意味であると見られており、そして屋内に進入した時点でその放浪者は失踪したものと見なされる。捕まった後の一部始終を捉えた唯一の映像記録からは安心したような表情が伺える。
呼び掛けの内容の一部抜粋:
「おーい戻っておいで、危ないよ」
「もうお外暗いよ」
「帰る時間だよ」
「僕/私の負けでいいから」
「隠れてないで出ておいで、お願いだから」
「ね、中で一緒にお迎え待とう」
「お母さん(他にはお父さんなど)心配してるよ」
「どこにいるの」
「聞こえてるなら声を出して」
「なんで届かないの」
「かくれんぼはもう終わりだよ」
備考
- 音声通話中に実体と接触してしまった失踪済放浪者の事例が存在する。通話していた相手によると、受話口からは何かを引きずるような音とともに、放浪者のが聞こえた後に、しばらくして通話していた放浪者と実体のものと思われる複数の笑い声、日本語と思われる不明瞭な会話が聞こえてきたという。通話の相手はこの一連のやりとりに一切干渉できず、突然一方的に通話が切れたらしい。改めて、実体と接触してはならない。
- 園舎内の園庭に面した一部屋1に、失踪した放浪者のものと思われる衣類が乱雑に積まれていたという報告が複数件寄せられている。またいずれも発見の際、施設の奥の方から楽しげな子どもたちの声が、ドタドタと向こうへと走り去っていく足音とともに報告されている。積まれた衣類との関係性は不明である。
入口と出口
階層への入り方
- Level 4 N で外れ落ちると稀に Level 400 N に到達することがある。
- 何らかの階層で「行方不明になった子どもを探している」という旨のポスターが貼られた構造物を見つけ、そこで外れ落ちると Level 400 N に到達する。
階層からの出方
- Level 400 N の外に出るとランダムな階層へ到達すると思われる。
- Level 400 N で屋内施設のガラス扉に向かって外れ落ちると Level 7 N へ到達する。
- Level 400 N で実体を攻撃しようとすると Level 80 N へ到達したという報告がある。

