クレジット
タイトル: Level 131 N - Suburban Gothic: "延々と連続する幸福の箱"
著者: HokuhokuPoteto
作成年: 2025
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Level 131 N とは、バックルームにおける 131 N 番目の階層である。
Level 131 N 内にて撮影された光景
概要
Level 131 Nは基本的に等間隔で立ち並ぶ同型のプレハブ住宅と舗装されたアスファルトの道路、芝生で構成された空間である。
一見するとアメリカ郊外の住宅街に酷似しているものの、奇妙な相違点が少なからず存在している。まず目立つものから挙げると、住宅以外の建築物、例えば、通常の生活に不可欠な商業施設や銀行、教育施設といったものが見当たらず、街燈や信号、道路標識も一切存在しないという点がある。また、当階層では乗用車の類も発見されていない。しかしながら、道路幅は明らかに車の通行を意図していると思わしき広さであることに加え、車止めや千切れたタイヤチェーン等の存在が発見されているという矛盾がある。
天候は常に晴天かつ無風。気温も温暖であり、行動に支障を及ぼす要素は見られない。なお、特異な点として、上空の雲が一切動かないこと、そして、日の高さがおおよそ正午の位置から変わらないことがあげられるが、取り立てて害を及ぼす要素ではない。しかし、これもまた現実世界のそれとは大きく異なる要素である。
何より、この階層を住宅街とするならば、その構造は支離滅裂の一言に尽きる。例えば、「見渡す限りに続く一本道しか存在しなかった」という報告がある一方で、「十字の辻道が延々と連続していたかと思えば複雑なカーブ道が続き、結局、まともな道は一つもなかった」などと証言する放浪者も存在する。
このように、当階層の構造は非常に複雑かつ、一貫性がないが、一方で、共通する事項も存在する。まず、道路の幅は常に車がすれ違える程度であること、そして、住宅が一定の間隔でどこまでも建ち並び続けていることが挙げられる。イメージとしては、ほぼ同一の外観をしたプレハブ住宅の列を壁として成立する巨大な迷路と考えていただけば差し支えないだろう。
上述したように、当階層は街としては明らかに非合理的な構造である。また、ほぼ見た目の変わらない同型の住宅で構成されている点も相まって、一時的に方向感覚の喪失や精神にダメージを受けた事例が数件報告されている。しかし、その他にはとりたてて危険な区域および物体の存在は報告されていない。
また、詳しくは後の項で述べるが、これらの住宅は基本的にドアや窓等の開口部が開閉せず、破壊も不可能であるという特徴を持つ。このため、当階層内の建築物内部に関する情報は非常に乏しい。なお、ごく少数ながら、使用可能な出入り口を目にしたという報告も存在しているが、これを用いて建築物の内部に侵入することは決して推奨されない行為であることに留意するように1。
以上のことから、当階層は、先述した非推奨行為を行わない限りにおいては、比較的に安全な階層であると判断してよいだろう。だが、物資の調達がほぼ見込めない階層でもあるため、長期の滞在にはあまり向かないだろう。休息が目的でない場合には、後述する『階層からの出方』の項を確認し脱出することをお勧めする。
建築物の外部について
Level 131 N 内にはプレハブ住宅に似た建築物が多数存在するが、前項でも述べた通り、これらの窓・ドアは基本的には開閉不能である。これは施錠されている、もしくは故障によって使用できないのではなく、端的に言えば、はじめから出入り口としての機能を有していない。
放浪者の報告によれば、ドア、窓、その他の開口部はすべて継ぎ目がなく、単なるレリーフである。また、蝶番等の金具類は可動部が存在せず、おそらく飾りとしての機能しか有していないものとみられる。卑近な例をあげれば、舞台の大道具やTVショーのセットと同様なものと解釈してよい。
窓ガラスやドアを破壊することで内部への侵入を試みたという放浪者の証言もいくつか存在するが、いずれも失敗に終わっている。また、侵入が不可能であったばかりか、建材に傷一つつけられなかったとの報告があることから、これらの材質は現実のものと異なり非常に堅牢であるか、もしくは、建築物を破壊することができないこと自体が当階層の特性なのだと考えられる。以上のことから、建築物の内部への侵入は基本的に出来ないものと考えてよい。
なお、稀に開口部の開閉が可能な建築物を発見したとの報告があるが、有用な物資を得ることはまず不可能であることに加え、非常に危険であるため、侵入することは決して推奨できない。詳細は後の『特異な事例に関する補足』の項で述べる。
当階層内の建築物に開口していた窓を外側から撮影
建築物の内部について
前項でも述べた通り、各建築物の窓は開閉不能であるが、そこから部屋内の様子を観察することは十分に可能である。報告によれば、各建築物の内部は現実世界の民家、特に欧米の一般家庭のものと非常によく似ているが、いくつか違和感を覚えさせる点が存在する。主要なものは以下の3点である。
- 食べかけの食物や脱ぎ捨てられた衣服、火のついた暖炉等、人の痕跡を色濃く感じる要素が揃っているにもかかわらず、住民や、その他の生物は一切確認できない。
- 無人であるにもかかわらず、部屋内はある程度、整頓されている。また、部屋内の食品が傷む様子はなく、大皿に盛られたチキンからは、まるで焼き立てのように白い湯気が出ていた、などという報告も上がっている。
- 衣服をまとい、ポーズのついたマネキンが数体設置されている。単体で設置されている例は少なく、多くの場合は複数体。特に壮年の男女と小児、または若い男女の組み合わせが比較的に多くみられる。
このうち、3点目のマネキンについては、かなり喜怒哀楽を誇張した表情に造形されており、非常に特徴的である。特に添付画像のように大きく口を開けた笑顔のものが最も頻繁にみられる。
漏れ聞こえる音声について
当階層内の建築物からは、ラジオやTVショーのものと思わしきノイズ交じりの放送が常に漏れ聞こえている。内容はコメディ色の強いホームドラマやメロドラマと思わしきもの、または子供向けのカートゥーンといった比較的明るい雰囲気のフィクション作品であることが多く、他にはスポーツの実況が流れていたという報告が数件ほど存在する。一方、ニュースやノンフィクション等が聞こえたという報告はない。
また、建築物の壁に耳を当て、内部の音を詳しく聞き取ろうとしたところ、以下のような音声が先述した放送に交じって微かに聞こえたという報告が存在する。
- 女性らしき人物の悲鳴と助けを求める声
- 男性らしき人物の怒声
- 激しい殴打音とガラスが割れるような破砕音
このような音が聞こえた直後、先述した放送の音量が急激に上がり、報告者は耐え切れずに耳を離している。また、これにより頭痛と耳の痛み、一時的な聴覚障害を負ったが、後に問題なく回復している。この現象は放浪者が建築物内部の音声を聞くことを妨害したようにも思えるため、建築物内に意志を持った存在がいるのではないかとの意見もあるが、この他に裏付ける情報もないため推測の域を出ない。
なお、この時に聞こえていた放送の内容は、報告を上げた者の主観によれば、若いカップルがコミカルな調子で軽い口論をしているもので、コメディ色の強い恋愛ドラマのワンシーンのような印象であったという。また、この現象が発生した建築物の内部は、あくまで窓から観察できる範囲ではあるが、日当たりの良いダイニングキッチンであり、笑顔で向かい合う若い男女のマネキンが中央に設置されていた。具体的には肩をすくめる若い女性と、腰に手を当ててテーブル上の皿を指さす男性の組み合わせである。中央のダイニングテーブルには少し焦げたハンバーグとサラダ、スープが置かれていたという。これらの要素にはある程度の関連が見られるものの、詳細はいまだ不明である。
物品
これまでLevel 131 N 内で発見報告のあった物品について、主要なものを以下のリストにまとめる。当階層内で見つかる物品の特徴については、食料・飲料はほとんどなく、布製品が比較的に多く見つかる傾向にある。
また、数件、ハサミや縫い針といった道具類が見つかったという報告もあるものの、いずれの場合も破損しており、使用できる状態にはなかった。なお、これらの物資の大半が路上や路上に設置されたゴミ箱から発見されている。
- 割れた風船の残骸
- カラフルな紙片
- 毛玉だらけのセーター
- 毛糸の端切れ
- ところどころふやけたバースデーカード
- 片方だけのミトン
入口と出口
階層への入り方
放浪者の多くは、住宅に似た階層、または階層内に存在する住宅から扉やそれに類するものを用いて出た直後、この階層へと移動していたと証言している。特に、以下に列挙する階層からの到達事例が比較的に多い。
また、階層移動直前に複数の放浪者が共通して報告している事象として、自身が滞在している空間に非常に強い居心地の悪さ2を覚える、というものがある。当階層は比較的に安全かつ安定した空間であるにもかかわらず、放浪者らの多くが極短時間のうちに脱出を試みているが、その原因の大部分はこの現象にあるとみて良いだろう。
階層からの出方
地下鉄の出入り口に似た建造物、内部の様子
当階層からの脱出方法は、一般的に良識に反する、または無作法とされる行為を行うことである。具体的に例を挙げると、建築物のドアを何度も強く叩く、道端に痰を吐くといった行為がこれにあたり、放浪者らはこうした行為に及んでから、おおむね数十分程度の間に、立ち並ぶ建築物の隙間に、レンガ製の古い地下鉄の出入り口に似た建造物を発見する。
この入り口から伸びる階段は非常に長く、また、下るごとに徐々にステップの幅が狭まってゆき、最終的にはほぼ垂直な穴のような様相を呈する。そのため、放浪者はこの穴を自由落下することになるが、この時の落下スピードは非常に遅く、別階層への着地によって怪我を負った例はほとんど報告されていない。
また、この手段によって別階層へ移った際、衣服のどこかに5センチ四方程度の布が縫いつけられているという現象が報告されている。この時、縫い付けられる布の色柄や材質はまちまちであるが、なんらかの文章が刺繍されているという点で共通している。
なお、この内容については先述した階層移動手段を行うに際してとった行動に関連性があるとみられており、例えば、道路上に寝転んで休息をとった放浪者には「交通の邪魔」、衣服が泥で酷く汚れた状態で当階層へ到達した放浪者には「汚い身なりで公共物を汚すな」という文が刺繍されたタグが、それぞれ縫いつけられていた。
- Level 131 N にて地下鉄の入り口を見つけ、階段を降り落ちると、Level 605 N、 Level 21 N、Level 256 N、Level 385 N のいずれかの階層へ到達したという報告が比較的に多い。
特異な事例に関する補足
例外的な特徴を示す建造物
これまで1件のみではあるが、Level 131 N 内にて開閉可能な開口部を発見したとの報告が存在する。しかし、その頻度の少なさ、情報の乏しさから不確定な点があまりに多いため、本項に補足として記載する形となった。
この報告を上げた放浪者は当階層内にて、玄関部分が大量の風船で覆われた建築物を発見。興味を惹かれて接近したところ、玄関ドアが薄く開いていることに気がついたという。なお、このような特徴を持つ建築物の報告自体は、少数ではあるもののこれまでも存在していた。しかしながら、その内部への侵入に成功した例は、確認出来得る限りではこの一件のみである。
その後、放浪者は食料品等の物資を調達する目的で侵入したものの、内部は窓から覗いた時とは大きく異なり、廃墟同然に荒れ果てていたと証言している。特に、テーブル上の皿は空で、端々にこびりついた料理汚れや食べ残しに無数のハエがたかっていたことが印象的であったという。
また、床には割れた食器やガラス片のようなものが散乱しており、頭上(おそらくは上階)から女性の金切り声と食器が割れるような音が絶えず響いていた。またこの最中、部屋内の階段から大皿とグラスがいくつか飛び出すように転がり落ち、足元で砕けたことで放浪者は軽度の裂傷を負っている。
これらの事象に恐怖心を感じた放浪者が逃亡しようとしたところ、上階から赤子の激しい泣き声、続いてヒステリックな女性の怒声が聞こえたという。直後、階段の上から赤子の入ったゆりかごが転がり落ちてきたため、放浪者はとっさにこれを掴み、部屋内から脱出した。その後、放心しながら歩いていたところ、ゆりかごの中の赤子はいつの間にか泥まみれの豚に変化しており、自らゆりかごから飛び出して何処かへ走り去っている。
この数分後、放浪者は地下鉄の入り口を発見し、別階層へ移動した。なお、放浪者の衣服には「私達の家に土足で踏み入らないで」と刺繍された布が縫いつけられていたことが後にわかっている。
なお、報告を上げた放浪者はこの特異な建築物について、外観については見覚えがないが、内部の様子については曖昧であるが既視感があったと証言している。具体的には、「ある時を境に子供の姿を一切見かけなくなって気がかりだった隣家」を思い起こさせたのだという。しかしながら、報告者はこの隣家の様子について、誤配送された荷物を届けるなどした際にドアの隙間から数度、目にしただけであり、確かなことは言えないとも述べている。

