一つ一つの表現に対する感想
一。やけにトイレを推しているのが面白いと感じました。
二。下記の部分の表現が面白いと感じました。
我々ウィキスタッフはあらゆる状況において放浪者の生存と現実世界への帰還を最優先し、たとえ階層そのものが放浪者にとって魅力的に映っても危険な階層に意図して侵入する試みは積極的に防いでいく所存であることを覚えておいて欲しい。
三。「ピンク色のカプセル剤」と「水色のカプセル剤」を読んで赤い薬と青い薬を想起しました。
四。「青色に濁ったアーモンドウォーター」を読んでデートレイプドラッグを想起しました。
全体の表現に対する感想
一。一枚目の画像が良いと思いました。やや暗めな印象で、それが不安を覚えるような印象に繋がっています。この画像はメイドカフェを写したものですが、そのようにメイドカフェを写しているという印象は薄く、あくまでも街角を切り取った写真だという印象でした。私としては、このことが際の画像としての質を高めていると思うため、これに肯定的です。
二。この記事では作中の運営が情報を隠そうとしていますが、これは私が作中の運営に抱いていたイメージとは異なります。私のイメージでは、運営は淡々と管理し読者の自主性に任せるイメージでした。ただし、このイメージは私の中でも重要性が低い方なので、それほど気になりませんでした。
三。この記事が与える印象が、それぞれの部分でばらけているように、私は感じました。具体的には、三通りの印象があり、それぞれが繋がっていないように、私は感じます。
一つ目は、この記事の冒頭にある警告と相対危険度表示から受ける、危険な空間であるという印象です。これだけの警告があるんだから、この空間の中では常に警戒しなから行動しなければならないんだな、という印象です。
二つ目は、一枚目の画像から受ける、静かで薄暗くて寂れた空間であるという印象です。メイド喫茶の門構えも(イラストを除けば)普通のファミリーレストランと同程度の装飾であり、特別なものを感じさせません。メイド喫茶の内部も薄暗くなっており、外部と同程度の印象です。何らかの出来事が起こるとしても、じわじわと進行していく、というような雰囲気です。
三つ目は、二枚目の画像および性質の記述から受ける、活発に活動していて人間を捕らえて離さない空間であるという印象です。一枚目の画像から想像できないほど料理の写真は明るく、常にメイドが接客のために動き回り客が食事を行うと空間の説明は記述しています。この空間のメイド喫茶の内部では、常に食事と性行為の音が発生しているのではないかと思わせます。
これらの印象が滑らかに繋がらず、この記事の魅力を下げていると、私は感じました。一つ目の印象と三つ目の印象は類似しているのですが、そこに二つ目の印象が割り込むことにより、全体としてはちぐはくな印象になっていると、私は感じました。たとえば、一枚目の画像が、もっと怪しげで魅惑的なものであったら、全体の印象がまとまったかもしれません。たとえば、一枚目の画像のメイド喫茶の内部が異様に明るくなっていたら、全体の印象がまとまったかもしれません。
四。この空間に存在する異常な存在が、こちら側へ友好的で意図が分かりやすいアプローチをしてくるのが孤独感を失わせている印象です。
異常な存在を加えることで孤独感を生み出すためには、疎外感を強調する必要があります。疎外感を生み出すためには、ディスコミュニケーションが必要、つまり此方側とコミュニケーションを行わないことが必要です。そもそもコミュニケーションを行わない、コミュニケーションらしき行動をしていても意図が不明である、異常な存在同士でコミュニケーションを行っても此方側とはコミュニケーションを行わない、というような描写が必要です。
この記事に登場する異常な存在は、こちら側とコミュニケーションしようとしますし、こちら側とコミュニケーションしようとする意図が分かりやすいです。このため、この記事の異常な存在は、疎外感を生み出すことなく、孤独感を損なわせています。
ここで「意図」と書きましたが、これは異常な存在の内実とは無関係です。これは、「どのような意図があるのか」を読み取る読者によるものです。その意図が分かりやすいと読者が感じたら、読者は孤独感を覚えなくなりますし、その意図が全く分からないと読者が感じたら、読者は孤独感を覚えます。
五。この記事を読んでいて、若干の性的興奮を感じました。この記事のシチュエーションはポルノグラフィとして魅力的であると感じました。
総評
The Backrooms は際の空間の画像と文章が作り出す世界観に没入する感覚を楽しむ創作であるという主義を、私は掲げています。それにそぐわない三つの問題点を、この記事は抱えていると私は考えます。
一つ目の問題点は、一枚目の画像が生み出す印象と、その他の部分が生み出す印象が、やや合っていないように感じることです。一枚目の画像は静かで落ち着いた印象ですが、その他の部分は活発で危険な印象であり、これが齟齬を起こしています。一枚目の画像が作り出す印象を拡張するような記述になっていません。
二つ目の問題は、この空間の内部に存在する異常な存在が孤独感を損なっていることです。この異常な存在は、こちら側とコミュニケーションしようとし、その意図も分かりやすいため、孤独感を失わせるものになっています。
三つ目の問題点は、この空間の中核となる性質が、私にとって、性的興奮を引き起こすようなものであることです。際の空間が作り出す雰囲気に没入することを阻害する要素が幾つかあります。ホラーは、恐怖を呼び起こし、没入を妨げます。グロは、嫌悪感を呼び起こし、没入を妨げます。複雑な記述は、疑問を呼び起こし、没入を妨げます。コメディは、笑いを呼び起こし、没入を妨げます。現実で対立が生じている事柄に関する記述は、様々な感情を呼び起こし、没入を妨げます。そして、エロは、性的興奮を呼び起こし、没入を妨げます。もちろん、これらは程度問題なのですが、この作品の記述は、私の閾値を超えていました。
これらの問題点のため、私は Level 699 N に対してマイナス票を投じます。