夢見: 1
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夢見

夢見: 1 とは、特定の方法を踏むことにより見られる夢である。以下にはこの階層への到達報告のうち、最も鮮明なものを引用する。

概要

この夢は、白く塗られた壁を持つ小さな建物と、その周囲の出来事が主題の夢であった。この夢において、ある二つの要素――建物と蝶――以外は基本的に集中して意識されることは少なく、従ってそれらは朧気である。

建物は、階層内で唯一鮮明な記憶が残っている、一階建ての小さな建物であった。それにぼんやりとした暖かさを感じたのは、真っ白な壁が太陽の光を反射していたためだろう。

私は小さな舗装された道をぼうっと歩いていた。そしてこの建物の前を通りがかると、どこからともなく黒い影が現れた。それは店の反対側の道路の方から飛んできて、黒い店名標の周りを飛び回ったのだ。よく見てみるとそれはひらひらと蠢くものであり、それが蝶であることが分かった。私は振り返り、それをまじまじと眺めた。蝶につられるかのように建物に目をやる。視線は未だその黒い影にぴったりついて離れなかったが、しかし視界は鮮明になり、店名標の付いた建物の全貌がようやっと目に入った。正面から見て右側には赤茶けた扉が付いているが、それは重要ではない。ここに入ることは無いのだから。左側には店名を表していると思しき看板があった。これは黒色の金属で形作られた、横書きのアルファベットの集合である。綴りは覚えていないが、やけに洒落た字体だったのは記憶に残っている。壁面から少し離れるようにして設置されたそれは、向かい側からの光によって白い平面に影を落としていた。壁との明暗の差で少し目に優しかったのを覚えている。

そして白く光る壁、その上に黒く落ちる意味の分からない小洒落た英字の影、その間を縫うようにして無秩序に、しかし滑るように動き回る蝶の羽が全て頭へと押し寄せてきたのを覚えている。そして目はその光景の一つ一つを突き刺すように捉え、咀嚼せよと脳みそへひっきりなしに波を送ったのであった。蝶は上下左右に飛び回っていたが、不思議なことに建物から離れることは無かった。あそこには花なんて無かったので、どうにも不思議に感じた。近くの地面にはほんの一握りの草が生えている程度だった。建物のすぐ前には排水溝の蓋があって、じゃりじゃりとした小石が散らばっていた。道の所為だったのだろうか。道も少し砂利っぽかったはずだ。歩くと小気味よい音が鳴って、少し体が弾むような。完全に砂利しかないのではなく、小石混じりのコンクリートの表面が少し剥げている感じの道路だった。

ある時、前の方から私を呼ぶ声が聞こえてきた。私は蝶から目を離し、名残惜し気にその場を離れようとした。私が歩き始めるころには、一匹の蝶が建物を離れ、どこかへ飛んで行っただろう。しかし、その場にもう一匹は留まっていた。そうだ、蝶は二匹いた。冷たい木枯らしがぴゅうと吹いたとき、それに流されてもう一匹の蝶がやってきたのだった。視界にちらつく二つの影はやや風に流されながらも看板の前に留まり、時たま重なりながら藻掻いているように思えた。そして白く照り輝くだけであった壁は小さな黒い蝶の踊り場となり、その存在に意味を持つようになったのであった。白い壁の小さな凹凸、その一つ一つにまで光が当たって微小な影を作っている。二匹の蝶の影は、その凸凹に引っかかるようにぎこちなく動いていた。しかしそれらの影にも秋の日差しが当たり、その黒を、その境界を淡いものとしていた。不思議なことに、私が見ている間、蝶の影は壁から出ていくことは無かった。いくら風に吹かれようとも意地でも建物から離れず、その照り輝く白をキャンパスに、ぼやけた影で絵を描こうとしているかのように。その動きを余すことなく見ようとした私は立ち止まり、皆において行かれそうになったのである。そして呼び声がし、建物から目を離した。私が前を向く頃には二匹の蝶は離れ離れになり、もはや再び会うことは無かった。

私の前にも、世界は広がっていた。空は青く、空気は冷たい。湿度はそれほど高くなく、秋の肌寒い時期の気候である。光は澄み渡り、見上げれば空の青が何にも遮られることなく目に映る。その青さにはほんの少しの白さが混じり、視界に僅かな霞をかけていた。恐らく、もうすぐ冬が来るのだろう。からっとした秋晴れからは、その気配が感じられた。ときおりひんやりとした木枯らしが建物の合間を吹き抜けてゆく。足元でカサと音を立てるのは枯れ葉であり、上から風切り音がしたならばそれはカラスであろう。いくらかの雲の間を飛んでいた。

道路は舗装こそされているものの、長年の使用によって所々が荒れている。両端には家や店のようなものが立ち並んでいるが、それらの概観は覚えていない。それらは古く、長年にわたって風雨に耐えてきたかのような印象を受ける。所々に個人営業の小さな店が点在しており、"建物"はそのうちの一つであった。開いてはいなかったようだが。

正面には何人かの人影があったと思う。赤、白、灰、ベージュなどの服を着てこちらを見ていた。そして彼らから聞こえるのは、私を急かすあの呼び声。

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遠景のイメージ。

入口と出口

夢見のために

  • 複数人で観光地を訪れ、二泊三日の旅程の最終日に住宅街と商店街の境目にある小道を通り抜けると、次回就寝時の夢が夢見: 1 となる。

起床のために

  • 特段の対策必要無し。自然に起床する。
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